「引窓」
翫政の与兵衛は純朴な青年といった感じ。出世を喜ぶ様子にほのぼのする。地のせりふほそれほどでもないが、歌い上げるようなところは仁左衛門の教えを感じさせる。
お早の吉太郎は節目がちになるとしっとりとした風情に色気がある。冒頭の、月見飾りをしつらえるところは余裕がないのか、手先が乱れたような。けれど、夫を思うよい女房ぶり。
お幸の當史弥は老け役のセリフ回しがよく、ちゃんと母に見えた。所作に若さが見えたのが惜しい。
濡髪の鴈大はもう少し大きさが欲しかった。
「慣彩舞七以呂波」
「傾城」
千寿は立姿が美しいのだが、表情が鬼気迫るというか、怖かったのはなぜ?昔の男を思い出すなんて色っぽい話でなく、親の仇でもうちにいくようだった。
「越後獅子」
千太郎と愛三郎。千太郎が縦に伸びていてびっくり。そのせいか、少しバランスが悪かったようで、一本下駄でグラついた。愛三郎は少年らしいかわいさ。以外に体幹がしっかりしていて、布晒しの扱いも綺麗だった。
「座頭」
千次郎。愛嬌があって嫌味がないのがいい。
「業平」
裕次郎の平安貴族が似合う。顔立ちが貴族っぽいとは意外な発見。ただ、鼓を打つのは難しい。音がちゃんと出るかが気になってしまって、踊りに集中できなかった。
「橋弁慶」
松十郎の弁慶に折之助の夜鷹。
夜鷹に翻弄される弁慶が面白く、チャーミング。花道の引っ込みで、飛び六方かと思わせてよろけ、普通に退場するおかしさ。折之助は大男を手玉に取りつつも、愛嬌があっていい。
「相模蟹」
りき弥の海女姿は可憐。拍子をとるのが少し前取りだった気がする。
「朱鍾馗」
當吉郎の鍾馗は恰幅がよく、似合ってる。
最後は出演者が勢揃いでフィナーレ。華やか。
幕が降りた後、出演者全員と、指導役の幹部があいさつ。「いつもだったら兄が…」と言葉を詰まらせる仁左衛門に涙。「松嶋屋!」と掛け声をかけたおっさんがいたが、どうなんだろう。
けど、メンバーの大半が上方歌舞伎塾出身だしと、後進を育てた秀太郎の功績を仁左衛門が何度も口にしていたのが胸を打った。我當もあいさつしたが、言葉がかなり出づらい様子。
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