2015年1月20日火曜日

2015年1月18日 壽初春大歌舞伎 夜の部

「将軍江戸を去る」

青果ものは好きではのだけれど、今回は悪くなかった。梅玉の慶喜に弥十郎の伊勢守、橋之助の山岡鉄太郎とベテランの役者ばかりだったので、セリフ回しも落ち着いていたのが良かったのか。前回は花形だったので、セリフの応酬がうるさく感じたのだけど。


「口上」

藤十郎に代わって、仁左衛門が襲名の披露役。歴代の鴈治郎の紹介と、先代、先々代との思い出など、簡潔だけれどいい口上だった。

橋之助、愛之助、竹三郎、弥十郎、梅玉、秀太郎、亀鶴、虎之助、壱太郎、扇雀、藤十郎、鴈治郎と続く。あまり奇をてらった面白いことをいう人はいなかったけど、秀太郎の柔らかい口調が良かった。


「封印切」

仁左衛門の八右衛門の厭らしさ、憎らしさといったら!大阪にこんなおっちゃんいるよなあという。口を開けば憎まれ口ばかりというのが、いっそ痛快なほどで、

忠兵衛の鴈治郎は、情けないけど見栄っ張りな様子が、吉田屋とちがってぴたりとはまる。

井筒やおえんの秀太郎が出ると、上方の風情がぐっと増す。


「棒しばり」

愛之助と壱太郎の息もあい、楽しく、陽気な一幕。曽根松兵衛の亀鶴も、演じている人達が楽しそうなのが何より。

2015年1月19日月曜日

2015年1月18日 「海をゆく者」

アイルランドが舞台で、呑んだくれの男たち5人の芝居。

吉田鋼太郎が観たかったのだけれど、目と足が不自由な兄の役で、下品で乱暴な様子に観ている間中嫌な気分。うまい役者だからこそなのだろうけど、ところ構わず痰をなすりつけたりとか、生理的な嫌悪感を刺激されどおし。あちらの人はこういうのが面白いのかもしれないが、ちっとも笑えない。

弟役の平田満の抑えた演技、死神役の小日向文世のおとなしいのに不気味な様子にはみせられた。浅野和之が道化のような役回りで、ちょっとほっとする。

途中、休憩をはさんだのだけれど、上演時間中ずっと、いびきをかいて寝ている人がいた。つまらなくって寝てしまうならまだしも、客電が落ちてすぐから寝ているってどういうことだろう。

2015年1月17日土曜日

2015年1月17日 初春文楽公演 第1部

「花競四季寿」

太夫5人に三味線5人で、初春らしくにぎにぎしく。呂勢大夫の出演がこれだけとは…と思っていたけど、想像よりは聞きごたえあった。特に「関寺小町」。冒頭、三味線の伴奏もほとんどなく、ピンスポットを浴びて一人で語るところがあったのだが、謡のような、不思議な妖しさのある声音に聴き惚れた。

人形は文雀で、老女の悲哀が切ない。

ほかは、「海女」でタコが出てきたのがユーモラスで面白かった。


「彦山権現誓助剣」

杉坂墓所の段は松香大夫の六助など6人の太夫と三味線は團吾。ちょっと急いているような演奏に感じた。

毛谷村の段は中が咲甫大夫と清介、切が咲大夫と燕三。
咲大夫は流石。悲劇でなくても、やはり聞かせる。

人形は和生のお園がよかった。六助の玉女は、立ち回りなど大きな動きが窮屈そうに見えて私の好みには合わないみたい。母お幸の紋壽が休演で勘弥が代役。


「義経千本桜」

道行初音旅

歌舞伎版とは違ってすごく面白かった。舞踊ものの文楽版ってこれまであまり面白いと思ったことがなかったのだけれど。床が華やかだったのが良かったのか。静御前の津駒大夫と狐忠信の文字久大夫ほか太夫5人と三味線は寛治、藤蔵ほか5人という豪華さ。寛治の力みの全く感じられない、繊細さと、藤蔵の力強さのコントラストが面白い。

人形は静御前の勘十郎と忠信の幸助だったのだが、幸助の忠信がよかった。冒頭、狐で登場しての早変わりあり、狐の面影を感じさせる動きありで目に楽しい。

2015年1月11日日曜日

2015年1月10日 中村鴈治郎襲名披露 壽初春大歌舞伎 昼の部

「寿曽我の対面」

工藤祐経に橋之助、曽我五郎を愛之助、十郎を扇雀。

愛之助の五郎は以前見たときのほうがよかったような。この役は全身から力があふれるような迫力が欲しい。敵討ちをとはやる五郎を十郎が抑えるようすも、型をなぞっているようで。

橋之助の工藤はちょっと大きさが足りないというか。

大磯の虎の吉弥が美しい。化粧坂少将の新悟もよかった。

最後、鬼王新左衛門で進之介が登場。この人っていつも似たような役だ。


「廓文章」

新・鴈治郎の伊左衛門に藤十郎の梅川。

ストーリーなんてないも同然で、役者の魅力で見せる芝居だから、伊左衛門は立っているだけで匂い立つような色香がなくては。残念ながら、鴈治郎にそういうチャーミングさは感じられなかった。藤十郎の梅川と並んでじゃらじゃらするところも、同じ顔が並んでいるのは気持ち悪い。いっそ、壱太郎とのほうがよかったのでは。

吉田屋喜左衛門に梅玉、おきさに秀太郎。秀太郎のおきさが出ると一気に上方の風情が現れてほっとする。梅川の近況を知りたい伊左衛門がなかなか言い出せなくて…というおきさとのやりとりは、これまで見たものよりも短かったようで、物足りない気分。成駒屋の型なのかな。

冒頭、伊左衛門に痛い目を合わせようとする吉田屋の若い衆を橋之助、藤屋の手代を愛之助と襲名興行らしいご馳走も。


「河内山」

河内山宗俊の仁左衛門。口跡がよく、セリフが耳に心地よい。江戸言葉もすてきだ。表情も冗舌で、昼の部ではこの演目が一番の見どころ。

腰元浪路の壱太郎は可憐。だけど、せっかく数馬が逃がそうとしてくれているのに、「殿様の手にかかりたい」ととどまる理由がわからん。殺されてもいいなら手込めにされちゃってもいいんじゃないのと思ってしまう。

出雲守の梅玉ははまり役。浪路に横恋慕して無体を働くいやな奴なのだけど、殿様のような、品のある役はさすがによく似合う。

番頭の松之助が

2015年1月6日 美の饗演2015

能の梅若玄祥とパリ・オペラ座バレエのマチュー・ガニオの競演。

最初、「タイスの瞑想曲」のバレエを上演したあと、能バージョンで玄祥とマチューが競演。

バレエは妹のマリーヌとのパ・ド・トゥ。兄妹だけあって息はぴったり。で、マチューの筋肉のすごいこと。がっしりしているという感じではないのだけど、細かい筋肉がびっしりという感じ。能楽堂だったので、通常のバレエ公演ではありえないくらい近くで見られたのでよく分かった。リフトはただ持ち上げるだけでなく、両手を伸ばした状態から、肩くらいまで下げてまた持ち上げるといった振りもあって、男性ダンサーって力仕事だなあと改めて関心。

能バージョンは玄祥が美しい女性に見えたのがすごかった。素顔からはとても想像できないけど、可憐なのだ。中程で、マチューと並んで手だけの振りを並んで演じる場面があったのだけれど、バレエの動きと能の動きの違いがシンクロしていて美しかった。

このあと、能の「土蜘蛛」。蜘蛛の糸を放つなど派手な動きが多くて楽しかったのに、謡があまりに心地よくて何度か意識を失った…orz。

最後はマチューのソロで「それでも地球は動く」。コンテンポラリーらしい、複雑な動きの連続。つくづくバレエダンサーはアスリートだと思う。能舞台が狭く、天井もあるせいか、ちょっと動きが窮屈そうだったか。

終演後、パンフレットを購入した人にサインをしてくれるサービス。マチューの屈託のない笑顔に好感。

2015年1月4日 初春文楽公演第2部

「日吉丸稚桜」

中を陸大夫と清志郎、奥を千歳大夫と富助。

小田春長から萬代姫を殺すよう命じられた木下藤吉。家臣の堀尾茂助義春は女房お政の父親、五郎助が叔父の敵と知って離縁しようとし、悲嘆に暮れるお政は自害。お政の首を萬代姫の身代わりに…と。なんだか悲劇まで主君のために利用してしまうというちゃっかり具合がなんだかなあ。

千歳大夫の語りはさすがの迫力。


「冥途の飛脚」

淡路町の段を英大夫と團七。
封印切の段を嶋大夫と錦糸。
道行き合かごを三輪大夫、咲甫大夫ほか。

歌舞伎の「封印切」は何度も見ているけれど、だいぶ話が違うので驚く。八右衛門、ええやつやんか。友達思いで、忠兵衛が道を誤らないように根回ししてあげたのに、忠兵衛の変なプライドが破滅に導いてしまう。一方、忠兵衛はほんとどうしようもない。金がないのに梅川に入れあげて店の金に手をつけてしまうのもアホだし、大事な為替を持っていながらふらふらと遊郭に行ってしまうのも浅慮すぎる。極め付けは、薄っぺらいプライドのために自暴自棄になって、為替に手を付けてしまう。はあ…。
同情の余地なんてない、どうしようもない男なのだけど、ことの大小はちがっても、こういうことってあるよなあとも思える。嶋大夫の語りがまたすごくて、説得力があるんだよなあ。

2015年1月8日木曜日

2015年1月2日 新春浅草歌舞伎 第1部

世代交代した浅草は主要メンバー全員が20代のフレッシュな顔ぶれ。
恒例のお年玉は2人で、初日は歌昇と巳之助。幕から現れてすぐ、暫く言葉を呑んだようだったのは、満員の客席に感無量になったのだそう。稽古に熱が入るあまり、浅草公会堂の給湯設備が止まってしまい、水のシャワーを浴びることになったとか。あとは、演目の簡単な紹介で、「独楽売」については「頭をからっぽにして楽しんでください」。仲の好さそうな2人の掛け合いが微笑ましい。


「春調娘七草」

曽我五郎の松也、十郎の隼人と静御前の児太郎。若々しい半面、動きはやや硬いかな。正月らしく、華やか。


「一條大蔵譚」

阿呆だと思われていた大蔵卿が実は作り阿呆だったというのがキモなのに、奥殿からの上演だったので、地に戻った大蔵卿としての登場でギャップの楽しみが半減。本来、阿呆→まとも→阿呆のところ、まとも→阿呆では…。

大蔵卿の歌昇は頑張っているなという感じ。作り阿呆で笑う顔がかわいい。

常磐御前の米吉が美しい。品があって、阿呆の大蔵卿に顔をしかめる様などよかった。

勘解由女房鳴瀬に芝のぶ。この座組みのなかでは最年長ではないかと思うが、安定感のある演技が場を引き締めていたように思う。


「独楽売」

巳之助と種之助が独楽売。陽気で楽しい踊りだけれど、初日のせいか、少々動きが固いか。

舞妓の梅丸はちょっと背が伸びたのか、骨格がしっかりしてきたような。このまま可憐さを保ってほしいのだけど…。

芸者の米吉がこちらも好演。茶屋女房の芝のぶともども、女方が美形揃いで目の保養。