「与話情浮名横櫛」
22日は3階席から、23日はとちり席で仁左衛門・玉三郎の黄金コンビを堪能。月初めに体調不良で休演した仁左衛門は復帰後は恙無く舞台を勤めているようだが、心なしか顔が痩せたような。ただ、口跡のよいセリフは変わらずで、前半の坊ちゃんらしい頼りない風情から、たかりに変貌したやさぐれた様子も鮮やか。そして、お富との絡みの色香がすごい。見つめ合う目と目、触れ合う手と手、惹かれ合う男女の吸引力に当てられっぱなしだ。源治店での再会後、再びの別れを惜しんで見つめ合う視線から思いが溢れるよう。玉三郎は粋な江戸の女で、ちょつともっちゃりしたセリフに風情がある。
それにしても、終わり方が唐突というか、与三郎がお富を抱き寄せて「生涯離さない」というハッピーエンドはいいとして、あれだけ怒っていた与三郎の急変ぶりに戸惑う。
多左衛門は初日から休演していた左團次に代わって権十郎。左團次だったら、と思わずにいられなかった。 藤八の松之助のおかしみ、蝙蝠安の市蔵の小悪党ぶりなど、ワキも充実していて、大歌舞伎をみたという充実感があった。
22日は大向こうが2人ほどいたが、ちょっと過多だった。与三郎の名台詞「しがねえ恋の〜」の前に「待ってました」は不要だし(しかも、五月雨で2度かかった)、連獅子ではやたらと「紀尾井町!」の声かけ。
「連獅子」
尾上松緑・左近の親子共演。踊りの家だけあって、左近は体幹がしっかりしていて、危なげない。楷書のような、端正な動きが子獅子の役にも合っている。百回りは数回転のみで、やりすぎないところがいい。
後半の獅子の精になってからは、子獅子が花道を後ろずさって戻るところは3階席からだと全く見えず。毛振りははじめ下向きに揺り動かすだけの場面が多く、物足りなく思っていたが、最後は長く、そしてハイスピードで回しまくるのに思わず涙が出た。連獅子で泣いたの初めてかも。
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