2023年4月30日日曜日

4月30日 文楽公演 第1部

「妹背山婦女庭訓」大序から二段目。

大序は御簾内で若手のリレー。太夫は亘→薫→碩→聖→小住、三味線は燕二郎→清方→清允→錦吾。太夫は皆よく声が出ていたが、やはり小住と碩に安定感がある。三味線は燕二郎の音が少し尖って聞こえたのだが、大序だから?

小松原は靖の久我之助、咲寿の雛鳥、南都の小菊、文字栄の桔梗、津国の玄葉に団吾。靖は清々しい好青年ぶりがいいが、咲寿は上擦ったような声がひねた感じがして可愛らしくない。終始上目遣いで語っていたのも気になった。人形は一輔の雛鳥と玉佳の久我之助の初々しい恋模様が微笑ましい。

蝦夷子館之口は亘・清公。清公の三味線は丁寧でいい。藤・清志郎。藤は声がいいし、情景描写も的確。清志郎は盆が回った時から目つき鋭く、三味線の音色もシャープで目が覚めるよう。

二段目の猿沢池は希・寛太郎。寛太郎がリードして声はよく出ていたけれど、緩急がなくのっぺり聞こえる。

鹿殺しは御簾内で碩・錦吾。三作が利発そうで可愛い。

掛乞は靖・清馗。ちょっとほっこりする場面で、お梶と米屋のやり取りの間が良く、笑えた。米屋の簑紫郎も浮かれた感じの登場から好演。

万歳は織・燕三、燕二郎のツレ。織はのっけから思い詰めたような真剣な表情で、重々しく語るのだが、ここってそんな場面なの?前回寝落ちしてしまった万歳踊りは、三作の玉彦が好演。踊りの手が滑らかで、達者だった。

芝六忠義は千歳・富助。改めて、山場が盛りだくさんで、千歳の熱演に圧倒される。三作の自己犠牲を嘆くお梶、忠義のためと我が子に手をかける芝六、重なる悲しみに襲われるお梶、と思ったら、三作は奇跡的に助かって出世を遂げる…と感情の上げ下げが激しく翻弄される。三味線も途中、琵琶のような音があるなど色々な音、旋律でききごたえがあった。


2023年4月23日日曜日

4月22日 四月大歌舞伎 夜の部

「与話情浮名横櫛」

22日は3階席から、23日はとちり席で仁左衛門・玉三郎の黄金コンビを堪能。月初めに体調不良で休演した仁左衛門は復帰後は恙無く舞台を勤めているようだが、心なしか顔が痩せたような。ただ、口跡のよいセリフは変わらずで、前半の坊ちゃんらしい頼りない風情から、たかりに変貌したやさぐれた様子も鮮やか。そして、お富との絡みの色香がすごい。見つめ合う目と目、触れ合う手と手、惹かれ合う男女の吸引力に当てられっぱなしだ。源治店での再会後、再びの別れを惜しんで見つめ合う視線から思いが溢れるよう。玉三郎は粋な江戸の女で、ちょつともっちゃりしたセリフに風情がある。
それにしても、終わり方が唐突というか、与三郎がお富を抱き寄せて「生涯離さない」というハッピーエンドはいいとして、あれだけ怒っていた与三郎の急変ぶりに戸惑う。
多左衛門は初日から休演していた左團次に代わって権十郎。左團次だったら、と思わずにいられなかった。 藤八の松之助のおかしみ、蝙蝠安の市蔵の小悪党ぶりなど、ワキも充実していて、大歌舞伎をみたという充実感があった。
22日は大向こうが2人ほどいたが、ちょっと過多だった。与三郎の名台詞「しがねえ恋の〜」の前に「待ってました」は不要だし(しかも、五月雨で2度かかった)、連獅子ではやたらと「紀尾井町!」の声かけ。

「連獅子」

尾上松緑・左近の親子共演。踊りの家だけあって、左近は体幹がしっかりしていて、危なげない。楷書のような、端正な動きが子獅子の役にも合っている。百回りは数回転のみで、やりすぎないところがいい。
後半の獅子の精になってからは、子獅子が花道を後ろずさって戻るところは3階席からだと全く見えず。毛振りははじめ下向きに揺り動かすだけの場面が多く、物足りなく思っていたが、最後は長く、そしてハイスピードで回しまくるのに思わず涙が出た。連獅子で泣いたの初めてかも。


2023年4月21日金曜日

4月21日 林宗一郎の能遊び

有斐閣弘道館で素謡の「熊野」。
能楽師5人の生声を間近で聞く贅沢。 

シテの宗一郎は途中、地謡からシテの謡に移るところで一瞬詰まり、隣の味方團が出だしを教える場面も。アフタートークで、普段の演能ではシテのところだけ謡えばいいが、素謡だと地謡もあるので咄嗟に頭が回らないのだとか。

2023年4月17日月曜日

4月16日 文楽公演 第2部

 「妹背山婦女庭訓」三段目

太宰館の段は睦・勝平。このコンビで定着しつつあるのかな。睦は声の掠れが厳しい。

妹山背山の段は呂・清介の大判事、織・藤蔵の久我之助、錣・宗介の定高、呂勢・清治の雛鳥。妹山がとてもよく、泣かされた。呂勢は前回の定高をもう一度と思っていたが、可憐な雛鳥もよく似合う。というか、雛鳥がよくないと泣けないと思った。語りだしはそれほどでもなかったが、割り台詞など音楽的なところが耳に心地よく、雛鳥の可憐さが胸に迫る。後半、定高と声を合わせての語りも心震えた。錣の定高は武家の女主人にしてはウエットすぎる気もするが、情感に溢れるのは悪くない。

一方の背山は…。織の久我之助はちょっと武張すぎるのか、もったいぶったように感じてしまう。呂の慎重な語りは大判事に合っているのかも、と思いつつも、どうにも共感しにいキャラクターだ。久我之助が腹を刺してから「覚悟の切腹急くことはない」とか言われると、どうしても笑ってしまう。

人形は、一輔の雛鳥、玉佳の久我之助がどちらもやりすぎないながら、情が感じられてとてもよい。和生の定高、玉男の大判事h言わずもがな。

2023年4月15日土曜日

4月15日 文楽公演 第1部

「妹背山婦女庭訓」

大序はパスして、小松原の段から。靖の久我之助、咲寿の雛鳥・采女、南都の小菊、文字栄の桔梗、津国の玄蕃に団吾。中では靖之語りに安定感がある。爽やかな好青年といった風情。咲寿の雛鳥は何だか年増が若作りしてるみたいで、可愛くないのは何でだろう。文字栄の女役はあまり聞き覚えがないので、新鮮だった。

人形は出遣いではなかったのだが、一輔の雛鳥の可愛らしいこと!結構グイグイ久我之助に迫るのだが、可憐さがあるので厚かましく見えないのがいい。

蝦夷館の口は亘・清公、奥は藤・清志郎。

二段目の猿沢池は希・寛太郎。

鹿殺しは御簾内で碩・錦吾。杉松が健気で可愛い。

掛乞は靖・清馗。

万歳は咲の病気休演で織・燕三。なぜか後半の記憶が…。体調がすぐれなかったこともあるけど。

芝六忠義は千歳・富助。風格を感じさせる、切語りらしい語り。それにしても芝六、どうして幼い子に手をかけるのよーと思う。

2023年4月9日日曜日

4月9日 文楽公演第3部

 「曽根崎心中」

生玉社前の段を三輪・団七。なんだか、耳に馴染まない感じで、三輪ってこんなだっけ?と戸惑って終わった。なんというか、あまり音楽性を感じられなかった。

天満屋の段は呂勢・清友。珍しい組み合わせだと思うのだが、正しい曽根崎心中を聞いた気分。こういうのが聴きたかったというような。お初はのっけから悲しみに沈んで思い詰めているし、徳兵衛は八方塞がりでもう行き場がない。どうしようもない状況がこれでもかと描かれるのは正直うんざりなのだが、美声に酔わされてしまう。

天神森の段は芳穂のお初に希の徳兵衛、ツレに小住、聖。三味線は錦糸、清丈、友之助、清公演、清方。錦糸の三味線に期待していたのだが、お初より徳兵衛を軸に物語が進むので、錦糸の三味線を堪能…というわけには行かなかった。また、今回の演出か小住の語りが意外と多かった。

人形は勘十郎のお初に玉助の忠兵衛。勘十郎は慣れたもので、天満屋では後毛が数本顔にかかって、哀れな中にも色気があった。玉助は…、気負いがあるのか、いつも以上に顔で芝居をしていて、生玉社で袋叩きにされるところなどは、本人の体がフラフラになって人形より目立っていたのはどうかと思った。



4月8日 林追善能

仕舞「胡蝶」 は林彩八子。

「安宅」
田茂井廣道のしてに、ツレの同山が9人に子方の田茂井律朗。ワキは福王知登にワキツレに河村大、曽和鼓堂。太刀持に茂山千之丞、強力にあきら。
田茂井廣道は詞章が聴きやすく、細かいところまで物語が鮮明に分かった。子方が可愛らしかった。弁慶が杖で打つところは、軽くだけど肩や笠に当たっていて、結構大きな音が出てびっくりした。(歌舞伎で寸止めするのに慣れていたので)
弁慶以下、10人の従者が並ぶと迫力がある。正体がバレたかと従者たちが立ち向かおうとするのを弁慶が押し留めるところは、止めるというより少しずつ押し出されいるよう。

「魚説教」
茂山七五三の出家、宗彦の檀家。
七五三の出家は嫌味のないとぼけた様子がしみじみ可笑しい。宗彦は念仏の代わりに魚の名前を並べ立てるのにあきれるところで、なんとも悲しそうな顔をするのが堪らなかった。


「求塚」 
林宗一郎のシテ、ツレは井上裕之真、杉浦悠一郎。ワキは福王茂十郎、ワキツレに中村宣成、喜多雅人。
演劇性の高い曲だ。シテの宗一郎は声がよく、面を掛けていても詞章がはっきりと伝わる。菟名日少女に起こったことや、心情が鮮明に感じられた。求婚者が塚の前で差し違えるところなど、つまづいたように一歩踏み出すのにハッとさせられたし、後シテの理不尽な罰に恨みを吐露するくだりや、劫火に焼かれるところは痛みが伝わるようだった。全く救いのないラストに打ちひしがれる思い。
でもまあ、何とも理不尽な話だ。美しく生まれたことが罪だと?2人の求婚者に非はないのか。
地頭に観世宗家、ワキに福王茂十郎、小鼓に大倉源次郎という錚々たる顔ぶれ。杉市和の笛が息も絶え絶えといった音色だったのは、調子が悪かったのか、そういう演奏なのか。

「海士」 
松野浩之のシテ、子方に林小梅、原大のワキ、ワキツレに有松遼一、岡充、原陸。
求塚でエネルギーを使い果たしたのか、あまり執着できず。あまり印象に残っていない…。





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