特に良かったのは、雑能「君がため」。善逸(野村裕一)、伊之助(野村太一郎)、炭治郎(大槻裕一)がわちゃわちゃしてるのが、原作のギャグの雰囲気。狂言師らはコミカルなのだが、炭治郎は終始謡ががりのセリフで、ふざけすぎないのもいい。
萬斎の無惨はハマり役。冒頭、脇正面席の後方から出てきたときは録音のセリフだったが、これはアニメの声優さん? 無惨が鬼になる経緯は、一人語り。パンフレット掲載の台本では切能の間狂言になっていたけれど、独立した場面になっていた様な。平安装束は陰陽師を意識してのものらしいが、よく似合っているし、冒頭とラストの洋装と時代が違うのもわかりやすい。
大槻文蔵は切能「累」のシテ役。少女のような姿だが、そこ知れぬ恐ろしさを隠し持っているような不気味さがあった。切られた首が飛ぶところで、作り物の小屋に頭を隠していたのが!人間国宝がここまでやる?と驚いた。白に混じって赤い蜘蛛の糸が飛び交い、見応え十分。この後再び無惨が登場し、炭治郎への呪詛の言葉を残すのは、続編を期待させる。
笑いの塩梅も良く、狂言その一「刀鍛冶」は鋼鐡塚(太一郎)がセリフの間で笑わせる。脇正面席だったので、地歌座に並ぶ囃子方と向かい合わせだったのだが、表情を引き締めて笑いを堪えている様子だった。
鎹鴉の面はセリフに合わせて嘴が動くのがよくできていたし、手鬼や人面蜘蛛の造形も巧みで、暗がりに蛍光赤のネイルが視覚に効いて面白かった。
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