2022年12月25日日曜日

12月24日 新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」

クリスマスシーズンの定番で、ロビーに飾ったクリスマスツリーなどが雰囲気を高める

 池田・奥村ペアのパドドゥはやはり幸福感が高くていいなあ。去年に比べるとアイコンタクトは控えめなように感じたのは、座席のせいかな。

子役の男の子で一際小さい子がいて、多分踊りは上手いから抜擢されたのだろうけど、周りの子たちとの身長差がありすぎて振り回され気味だったのが微笑ましかった。

2022年12月23日金曜日

12月23日 博多座文楽

「端模様夢門松」

幕前に勘十郎の解説。女中のツメ人形持参で、はじめ袖から少し顔を覗かせるなどして盛り上げる。

再演を重ねて碩の語りがより良くなった。門松は地で行ける感じだが、竹蔵ら同僚たちのキャラクターが明確になった。門松が「三人遣いになりたい」と嘆くところの大袈裟な泣きは義太夫らしくて良い。
三味線は清介、清公、清允の一門で(清方は休演)。楽しい手が多くて、息のあった演奏。
人形は全て頭巾だが、勘十郎の門松はもちろん、竹蔵の玉佳らも配役表現わ見なくても何となく分かった。
ただ、体調がすぐれなかったのもあるけど、途中で意識が…。客席を暗くするとどうしても瞼が落ちてしまうと思うのだが。

「曲輪文章」

はるばる遠征したのは錣&呂勢の曲輪文章が聞きたくて。呂勢の夕霧は期待通り。出の「わしゃ患うて…な」の声も間も素晴らしく、その後もフシやクドキがたくさんあって音楽的に聞き惚れた。
錣は伊左衛門にはウェットすぎかも。喜左衛門の靖は不足なく。聖が若い衆とおきさで、若手らしい溌剌とした語りは若衆にはいいぎ、女方はまだまだと感じた。けど、素直な発声なのでまっすぐ育って欲しい。

人形は玉男の伊左衛門。そういえば、端模様で門松が憧れる役。伊左衛門の出を見比べるという趣向が面白い。夕霧は勘十郎。派手な頭だけど、健気に見えた。

幕前に呂勢の解説。早口で、男女が痴話喧嘩してるだけであらすじはないとか、文楽には珍しいハッピーエンドでハンカチを用意してきた人は肩透かしとか、毒舌が笑いをとっていた。


2022年12月18日日曜日

12月18日 文楽公演

「本朝廿四孝」

信玄館は御簾内で薫・清允。通し上演だと若手がちゃんと端場を語れるのがいい。薫は思っていたより落ちついた語りだった。

村上義清上使の段は南都・団吾。こうやって聞くと南都ってベテランなんだと思う。人形はここまで頭巾。

勝頼切腹は織・燕三。
昼食を食べすぎたせいか、後半ほとんど寝てしまった…。三味線の音色がいいなぁと思っていたのは覚えてる。織の語りは…。やたら眉を動かす癖を何とかしたほうがいいと思う。

信玄物語は藤・宗介。
簑作と勝頼の関係がようやく分かった。板垣子息のほうは自身のことを知らなかったけど、実の勝頼のほうは信玄から本当のことを知らされていて、多分ちゃんと教育も受けている。奥方の常盤井にも知らせないというのかどうかと思うけど。

景勝上使は碩・友之助。碩は鑑賞教室のほうが良かった。

鉄砲渡しは咲寿・寛太郎。落ち着いて、悪くない。

十種香は呂勢・藤蔵。
いつもは途中で意識が飛んでしまうのだけど、最後まで集中して聞き入った。八重垣姫と濡衣を対比しつつ、どちらもいやらしくなく描かれてた。

奥庭は希・清志郎、燕次郎のツレ、清方の琴。
希は喉が締め付けられたような発声で声が出ていない。高音も出せるはずなのに。一息で語って欲しいところも、ブレスが多くてブツ切れな感じなのもマイナス。比べたら可哀想だけど、呂勢で聞きたかった。三味線はキレのある演奏。
アトを御簾内で聖・清方。若手らしく、声が前に出てた。

道三最後は亘・錦吾。
実は、とどんでん返しの結末。ちょっとバタバタして聞こえた。

人形は一輔の濡衣がとても良い。しっとりとして、しなやかな所作。勝頼への情も感じさせる。簑二郎の八重垣姫は可憐というより、ちょっと押しが強い感じがした。奥庭では狐の人形は持たないので、早替わりはなし。後半の三人出遣いは紋臣の左、勘昇の足。全体的にバタバタした印象。後ろを向いて足をバタつかせるところとか、人形の形が崩れていた。人形がターンするとき、左遣いが離れて主違いと足だけになるのは効率的でいいと思った。

12月18日 文楽鑑賞教室Bプロ

解説はパスして「絵本太功記」のみ鑑賞。

夕顔棚は碩・錦吾。
若手らしい、のびのびとした語りが気持ちいい。錦吾は音色に安定感が出て、顔つきも良くなったよう。
尼ヶ崎の前は小住・錦糸。
錦糸の三味線は一撥で雰囲気を変える。太夫の語りがぐっと引き立ち、小住も実力を十分出せた感じ。少し高音部が不安定だったけど、語り分けもしっかり。
後は芳穂・清丈。
声量がたっぷりしてるだけで良しとしたい。「現れ出でたる武智光秀」がしっかり迫力あった。最後、久吉と勝負は天王山へ持ち越すことで合意したところ、嬉しそうに笑って話すのがちょっと違和感。
人形は玉翔の十次郎が良かった。「爽やかなりしその骨柄」で決まる姿が颯爽として美しい。客席から拍手もあった。光秀は玉助。右肩が胴体に入り込んでいるみたいに見え、なんか違和感があった。

12月17日 大槻能楽堂

「阿漕」

友枝昭世のシテ。身体とのバランスがいいのか、能面が本当の顔のように見える不思議。キビキビとした舞で、前場は釣竿に糸(綱)を巻き付けるなど変わった動き。音を立てて竿を放ったかと思ったら、唐突に去ってしまう。
後場は痩せ男の面で、小さい網を携えて。網を操りながら、禁漁を犯したことにより修羅に堕ちた男の苦悩が描かれる。
なんかすごいものを見た、という感じで、これぞ人間国宝の至芸。少し時間は押していたのだが、短く感じた。
ワキは福王茂十郎。重厚感。 

事前の対談は大槻文蔵と村上湛。現在の伊勢信仰は明治維新後に作られたもので、室町〜江戸期は庶民は詣でたが、皇室は近寄らなかったとか。阿漕が陥る地獄もは仏教的なものでなく、他の作品とは様相が違う。最後に救いがないのも特徴。

能の前に狂言「金藤」
善竹隆平はちょっと頼りない盗賊がよく似合っている。長刀て脅して女の荷物を奪いながら、形勢逆転されて着ているものまで奪われてしまう。女の善竹忠亮は発声が独特。発話時に急にアクセントが来る感じが耳に触り、苦手に感じた。


2022年12月11日日曜日

12月11日 吉例顔見世興行第三部

「年増」

20分の短い舞踊。年増といっても20歳そこそこだそうだが、一人語りのように様々踊り分ける趣向。以前も思ったけど、時蔵は時折脚がガニ股のようになっておっさんぽく見えるのがいただけない。せっかく時蔵に来てもらうなら、関西の役者と絡む役で見たかった。


「女殺油地獄」

愛之助の与兵衛は格好つけて情けなく、浅慮で見栄っ張り…と与兵衛に求められる要素を余すこととなく体現(←褒めてる)。以前から、当代一の与兵衛と思っていたけれど、よりグレードアップした感じ。徳庵堤ではうかれて声のトーンが高く、より若々しく感じた。河内屋では悪態をつくのが甘えと裏表で、子どもが駄々をこねるよう。そして、豊島屋では改心したようすを見せながらも、すぐに調子よくなってお吉の好意に付け入ったり、泣き落としにかかったり。殺意を抱いてからは狂気の面持ちで、残酷ながら美しい。
孝太郎のお吉も過不足なく、与兵衛への好意からいろいろ世話を焼いていて、誤解されてしまうのだけど、その好意は男女の、ではないのだろうなという感じ。 
花車お杉の千寿に仲居おまさのりき弥、皆朱の善兵衛と刷毛の弥五郎は松十郎と千次郎など、上片歌舞伎の面々が出ていたのも嬉しい。
七左衛門は進之介。久しぶりに見たが、太川陽介に似てた。 

12月11日 吉例顔見世興行第二部

 「封印切」

鴈治郎の忠兵衛に扇雀の梅川。なんだかあまり哀れを感じないのだな。鴈治郎はどちらかというと三枚目が似合うし、扇雀は骨太の体つきなので、受け身の女というよりは、忠兵衛を尻にひいているみたいに見える。

愛之助の八右衛門は、ナチュラルに憎まれ役を好演。本人はモテるつもりなのに、総スカンを食ってしまう、こういう勘違い男っているよねと思わせる。

名題披露の翫政が太鼓持ち。


「松浦の太鼓」

仁左衛門の松浦公はワガママだけれどとてもチャーミング。「ばかっ、ばかばかばか」って3回くらい言っていて、ウフフという気持ちになる。左桟敷席だったのでお縫と其角を去らせたのを呼び止めたところ、花道に立つ2人越しにこちらを向いている仁左衛門がこちらを向いているように見えてドキドキした。舞台と同じ高さだから、目線が合うような気がするのだ。

其角の歌六は抜群の安定感。お縫の千之助は可憐だが、嘆き悲しむ仕草がちょっとクサイかも。二場で馬から落ちる松浦公を抱き止める近習の隼人が頼もしかった。

2022年12月10日土曜日

12月10日 能狂言「鬼滅の刃」

あまり期待していなかったのだが、想像を超えて面白かった! 鬼滅の刃の世界観を表現しつつ、ちゃんと能を観たという手応え。テンポよく、言葉が明瞭で聞き取りやすく、場面ごとのメリハリも効いて、グイグイ引き込まれた。五番立てと聞いて、何のことやらと思っていたが、この組み立てが絶妙。数多い登場人物をどう裁くのか懸念したが、それぞれの場面で異なる人をクローズアップすることで、メリハリが効いた。
 
特に良かったのは、雑能「君がため」。善逸(野村裕一)、伊之助(野村太一郎)、炭治郎(大槻裕一)がわちゃわちゃしてるのが、原作のギャグの雰囲気。狂言師らはコミカルなのだが、炭治郎は終始謡ががりのセリフで、ふざけすぎないのもいい。 

萬斎の無惨はハマり役。冒頭、脇正面席の後方から出てきたときは録音のセリフだったが、これはアニメの声優さん? 無惨が鬼になる経緯は、一人語り。パンフレット掲載の台本では切能の間狂言になっていたけれど、独立した場面になっていた様な。平安装束は陰陽師を意識してのものらしいが、よく似合っているし、冒頭とラストの洋装と時代が違うのもわかりやすい。

大槻文蔵は切能「累」のシテ役。少女のような姿だが、そこ知れぬ恐ろしさを隠し持っているような不気味さがあった。切られた首が飛ぶところで、作り物の小屋に頭を隠していたのが!人間国宝がここまでやる?と驚いた。白に混じって赤い蜘蛛の糸が飛び交い、見応え十分。この後再び無惨が登場し、炭治郎への呪詛の言葉を残すのは、続編を期待させる。 

笑いの塩梅も良く、狂言その一「刀鍛冶」は鋼鐡塚(太一郎)がセリフの間で笑わせる。脇正面席だったので、地歌座に並ぶ囃子方と向かい合わせだったのだが、表情を引き締めて笑いを堪えている様子だった。

鎹鴉の面はセリフに合わせて嘴が動くのがよくできていたし、手鬼や人面蜘蛛の造形も巧みで、暗がりに蛍光赤のネイルが視覚に効いて面白かった。

12月10日 吉例顔見世興行 第一部

「すし屋」

獅童のいがみの権太はなんか違う感じがするのは江戸前だからか。ごんたくれだけど憎めないという風でなく、ちょっと突っ張っている兄ちゃん。嘘泣きでは舌を出さず、小せんと倅を見送りもせずだったのも、あれ、と思ったところ。
壱太郎のお里は可愛らしい。目元のピンクが濃くて、ほろ酔いメイクのよう。
維盛は隼人。空桶を重そうに持ちすぎだし、維盛の高貴さも今ひとつ。権太のモドリを聞いているところなど、何もしない芝居にもう少し深みがほしい。
吉太朗の若葉の内侍は2度目だけあって、落ち着いていて、10月の時より年嵩に見えた。


「龍虎」

扇雀の龍に虎之助の虎。20分の短い舞踊ながら早替わりとぶっ返りで3態を見せ、楽しませる。はじめは白い能装束のような姿で、舞台裏に引っ込むと隈取りに獅子の毛、最後は白塗りに戻って袴姿。虎之助はぶっ返りが上手くいかなかったらしく、3階席からだとうつ伏せの姿勢でワタワタしているのが丸見えだった。踊りとしては特筆するものはなし。