2021年7月25日日曜日

7月24日 新国立劇場バレエ団「竜宮」

 浦島太郎がモチーフの創作バレエということで子ども向けと思っていたら、侮るなかれ。森山開次の演出・振付、衣装も舞台装置も素晴らしく、大人も見応えのある舞台だった。感服。

浦島太郎の奥村康祐、亀の姫の池田理沙子のコンビが作品に嵌っていた。奥村は表情豊かで笑顔がチャーミング。純朴な青年を好演。登場場面のソロをはじめ、躍動感のある踊りもたくさん見られた。池田は愛らしい姫を好演。薄い着物を使って太郎と絡む振付が素敵。息の合ったパドドゥもよかった。

紋付き袴姿の時の案内人をはじめ、フグ接待魚、サメ用心棒脇、タイ女将ら、海のキャラクターたちも、カラフルな衣装で個性的。イカす3兄弟はタンゴ風の踊りも楽しい。

子どもたちから亀を逃がすときに、ウサギと亀の競争を挟んだり、時の移ろいの場面で織姫と彦星など、日本のモチーフを挟む演出が心憎い。赤い着物の竜田姫って?と思って調べたら、秋を象徴する女神なのね(英語盟はAutumn Queen)。太郎が玉手箱を開けて老人になるところは、翁面と狩衣をまとい、シオル動作も(ちょっと型が甘かったけど)。

前日の残念な開会式より、こちらをご披露したほうがよっぽどよかったと思った。

カーテンコールで、右手をつないだ寺田亜沙子が先へ前へ行こうとするのにちょっとむっとした様子だった奥村?何かあったの?

7月18日 夏休み文楽特別公演 第1部


「靭猿」
チラシにはないが、幕前で亘による短い解説。靭の説明など。

津国の太郎冠者が狂言役者みたい。
団吾の三味線がベンベンいってる。
デビューの聖、落ち着いてる。
猿回しの場面でキャキャキャという猿の鳴き声のような音。そういえば、語りで猿の鳴き声はなかった。

人形解説は簑太郎。文楽界のタージンとはいかに。説明がぎこちないのと、声が小さくてややわかりにくい。立役の型の実演で、「雷の呼吸一の型みたい」と鬼滅ネタ?

「舌切り雀」
小住、亘、碵に清志郎、清丈、清公、清允。
小住の根性悪そうな婆がいい。

人形はみな頭巾を被って。子供向けの新作だから?となると、靭猿が出遣いだったのは何故だろう。一応古典扱いなのだろうか。

婆が葛籠の化け物に襲われるところで、赤いユニフォーム?を着た婆が骸骨の投げるポールをバットで打つ入れ事。背番号17に大谷ならぬ「ONITAKE」。

親雀が宙吊りで登場するのはいいとして、ラストで子雀と他2羽?も宙吊りするのはいかに?みんなで踊ってめでたし感を強調するため?

7月17日 夏休み文楽特別公演 第3部

「夏祭浪花鑑」

住吉鳥居前は口を碵・錦吾。悪くない。
奥は睦・団七。睦の団七がちゃんとヤクザ者らしくなっていて安堵。何年か前の鑑賞教室では、サラリーマンみたいでずっこけたから。

釣船三婦内は口を咲寿・寛太郎。浮ついたり、力んだりしてなくて、悪くない。
奥を錣・宗助。,

長町裏は織の団七に三輪の義平次、藤蔵。2人とも声量があり、迫力ある語り。義太夫節をきいた!という充実感がある。

人形は玉男の団七、玉志の義平次、一輔のお梶、玉佳の徳兵衛、清十郎のお辰ら。  


7月17日 夏休み文楽特別公演 第2部

「生写朝顔話」

明石浦船別れの段 呂勢・清治、清公の琴は御簾内。
盆が回って呂勢はやや舞台向きで、清治と距離を置いた感じ。稽古で何かあった?

20分ほどの短い場面だけど、節が多くて音楽的。深雪の可憐さ、船頭の野太い声と語り分けもちゃんとしてる。だが、何故だか少し物足りない。(18日に再見。口上が「豊竹ら…呂勢太夫」と謎のトチリ。何故「ら」? 座る向きはマシになっていたが、冒頭の節のところで三味線がやや急かすように感じた。歌い過ぎるなってこと?)

阿曽次郎の出で和生に拍手があったのはいつも通りだが、朝顔の勘十郎は船の窓から顔を出したところでは拍手がなく、阿曽次郎の船に飛び乗る(勘十郎の姿がはっきり見えた)ところでの拍手、なんで?人間国宝認定おめでとうにしても、間が悪い。(と思ったら、翌日はちゃんと窓から顔を出したところで拍手があった)

薬売りの段は希・勝平。勝平のおおらかな音が、コミカルな場面に合う。希もまずまず。呂のチャリ場を彷彿とさせた。
人形は薬売りの簑一郎が手の消毒をしたら、「密です」と書いた紙をかかげたりして笑いを取っていた。

浜松小屋の段は呂・清介。
すみません。つい眠気を誘わされてしまって。声量が乏しく、高音が掠れ気味のせいか、深雪が中年のようだった。

嶋田宿笑い薬の段。
中を南都・清き。掛け合いでない南都を聴くと、語り分けの確かさにベテランなのだなと感じる。声量もあるし。が、三味線が…。最後のオクリ?て調子が外れたようでずっこけた。

奥(切ではないのね)は咲・燕三。盆の裏で細棹を弾いていたのは燕二郎?
お得意のチャリで、軽妙なのだが、声量がなく、のっけから笑い疲れた感じ。
人形は祐仙の簑二郎が大活躍。こうして見ると上手い人なのだなと。師匠の芸風を受け継いでいるのかも。

宿屋の段は千歳・富助。安定の語りで身を委ねて聴いていられる。ただ、ラストの、お座敷の主が阿曽次郎と知った深雪の狂乱の様が振り切れすぎていて唐突な感じ。

大井川の段は靖・錦糸。のっけからハイテンションだが、違和感なく語っていた。

人形は勘十郎の独壇場。18日は大井川にたどり着いたところで杖が折れるハプニング。


2021年7月16日金曜日

7月15日 VR能「攻殻機動隊」

正直、話のタネに…というくらいの気持ちであまり期待していなかったのだが、意外に面白かった。
一番の眼目は、不意に消えたり、現れたりする素子(シテ)。それも、段々と姿が朧になるような感じもあって、現実と仮想空間を行き来するわうな不思議な空間。アフタートークによると、舞台上に斜めに鏡が仕込んであるそうで、そこに写しているようだ。(終盤、下手のカーテンの後ろで舞う素子の装束が垣間見得ていたのは、鏡の前で演技していた姿?)

地謡の力も感じた。録音だったのが残念だが、地を這うような低音が異空間を描出するのに適している。ただ、演者の声についてはワキの馬頭は地声だったのに、シテは録音だったのは残念。異空間を漂っている演出か、複数で演じている便宜上からか。

装束はよく見るような能装束なのに、面がマネキンみたいなのは、作品の世界に合っているとも言えるし、能らしくないとも。

アフタートークの人選が??だったのだが、近く上演する作品のキャストと聞いて納得。

2021年7月10日土曜日

7月10日 七月大歌舞伎 夜の部

「引窓」

こんなに面白い引窓は初めてというくらい面白かった。急な出世を喜ぶ与兵衛(仁左衛門)がチャーミングで、母お幸(吉弥)、女房お早(孝太郎)とのやりとりもほのぼのと微笑ましかったのが理由か。もちろん、実の子と義理の子の間で揺れるお幸の母の情に泣かされたし、幸四郎の濡髪も悪くなかった。

「新口村」
鴈治郎休演のため、忠兵衛と孫右衛門の二役を扇雀、梅川を壱太郎がそれぞれ代役で勤めた。これが、予想以上によかった。なにより、壱太郎の梅川がいい。情があって、薄幸そうな風情が役にあっていて、お紺よりよっぽどはまっていた。扇雀も女方より立役のほうが似合うのでは。孫右衛門があまりヨボヨボしていなかったけど、これはこれでいいような気もする。
ただ、後半、忠兵衛の替え玉?が結構しっかり顔を見せていたのは演出としてどうなん? 「今じゃない」のくだりも、しっかり戸口から出てきたので、客席に笑いが起こっていたのも興醒めだった。
竹三郎が忠三郎女房。ちょっとセリフがもたつくところもあったけど、元気な様子が嬉しい。(しばしば舌を出していたのが気になった)


7月10日 七月大歌舞伎 昼の部

「伊勢音頭恋寝刃」

高麗屋の福岡貢には心引かれなかったが、コロナ濃厚接触で休演の鴈治郎の代役で千寿がお鹿をするので急遽遠征。
期待していなかったものの、高麗屋の伊勢音頭は何というか、セリフのテンポや間が悪いとこんなにつまらなくなるのかと…。幸四郎の貢は姿はキリッとして二枚目らしいのだが、セリフがつまらない。万野は初役の扇雀で、これもいただけなかった。イヤミが効いていないのと、いやらしさの中に色気やチャームが感じられないからだと思う。
急逝した秀太郎に代わって万次郎を演じた孝太郎も、立役が板についてない感じ。お岸の虎之助は、出でパッと人目を引く華があったのはいいが、着物の裾捌きがぎこちなく、座っての演技に難あり。じっと貢を凝視したり視線をキョロキョロさせるのもよろしくない。
千寿のお鹿は登場から大きな拍手で迎えられ、大健闘。ただ、期待したほど面白くはなかったのは、女方だから?不細工ではあるが、声やら仕草やらが可愛すぎるのかも。
よかったのは、喜助の隼人。キリッとして格好良かった。

「お祭り」
期待していなかったのだが、意外な収穫。仁左衛門の鳶頭が格好いいのはもちろんだが、千之助の芸者が予想外に上出来。まず、ほっそりした瓜実顔が美しく、芸者姿が似合う。姫よりもいいのでは。踊るときの指先も綺麗で、上半身の柔らかさが加わったらなおいいと思った。千之助が踊っている時、後ろで見ている仁左衛門の眼差しが、甘さの中に厳しさが垣間見えて印象的だった。
孝太郎も芸者だが、今回は千之助に花を持たせた格好。花道の引っ込みでは、千之助と仁左衛門が手を取り合って先へ行くのを、ヤキモチをみせながら追いかける。
大向こうがないので「待っていたとはらありがてぇ」のお決まりのセリフはなしで、無言のまま三方へお辞儀する演出に。ちょっと寂しい。


2021年7月8日木曜日

7月8日 ROCK BALLET with QUEEN

 格好良かったし、面白かった! トータル1時間余だが、ぎゅっと凝縮された感じ。クイーンの楽曲のすばらしさに、トップレベルのバレエダンサーの技術が掛け合わされた充実の舞台。拍手が鳴りやまず、カーテンコールが繰り返され、最後はスタンディングオベーション。(鳴りやまなかった理由の一つは、「Born to Love You」がかかっていて、みんな手拍子してからというのもあるが)

薄暗いジャズバーに思い思いにグラスを傾ける5人の男(秋元康臣、池本祥真、井澤駿、菊池研、長瀬直義)。そこへ1人の女がやってくる。紅一点の米沢唯は、茶髪のカーリーボブがいつもと違ったモダンな雰囲気でチャーミング。で、踊りは緻密。男性陣もだけれど、速いテンポでの跳躍や回転はクラシックの舞台ではお目にかかれない感じで、ダンサーの底力を感じた。男性は井澤駿意外は知らないダンサーばかりだったが、やはり井澤は格が違うというか、輪郭がくっきりして見えた。

振付は福田圭吾。はじめは、ロックの音数の多いのに一つ一つ振りを入れているような感じで、手数が多いのではと感じたが、だんだん違和感がなくなっていった。特に「Radio GAGA」で7人がユニゾンで踊る振りが格好良かった。福田自身はバーのマスターみたいな恰好で、「bicycle race」でコミカルなソロ。身体能力の高さも魅せた。

楽曲は、ボヘミアンラプソディー、キラークイーン、Don't Stop me Now、Another One Bite the Dust、Love of my Life、Who Wants to Live Forever、Show Must Go on、Beautiful Day、RADIO GAGA?