2014年7月29日火曜日

7月26日 夏休み文楽特別公演 サマーレイトショー


「女殺油地獄」

徳庵堤の段を咲甫大夫と富助。

河内屋内の段の口を芳穂大夫と寛太郎、奥を呂勢大夫と清治。

豊島屋油店の段を咲大夫と燕三の代役で清志郎。

逮夜の段を文字久大夫と清友。

人形は与兵衛を勘十郎、お吉を和生。


咲大夫が今回で語り収めというのが残念。女殺と言えば咲大夫というイメージだったので。今回は芸談を読んでから聞いたので、細かいところにも意識がいって面白かった。

逮夜の段は初めて観たけれど、悪いことをした奴がつかまって、腑に落ちるというか納得感。それにしても与兵衛というのはつくづくどうしようもない奴だよなあ…。殺しが露見してからも、言い訳がましくごちゃごちゃ言っているし。

7月27日 夏休み文楽特別講演 親子劇場

「かみなり太鼓」

冒頭、「暑い暑い~」と咲甫大夫がかなりの大声で、子どもたちにもインパクト十分。口語体だし、話は分かりやすく、笑えるシーンも多くて楽しめた。

太鼓が下手なかみなりさんの音を三味線で表現していたのが面白かった。トロトロ→ドロドロ→ゴロゴロと変化していくの。

最後、かみなりさんが空に帰るところで、宙乗り。ステージを右に左に、結構長時間だったので、人形遣いの幸助は大変そうだ。


この後、解説「ぶんらくってなあに」を芳穂大夫と文哉。太夫の大笑いの実演のあと、客席の皆でやってみるなど、子ども向けに楽しめる工夫が。一方、人形解説は文哉はもうちょっと工夫したほうがいいのではと思った。結構長いので、小さい子どもは退屈していた。


「西遊記」

英大夫が途中、「妖怪ウォッチ」と言ったり、「レリゴー♫」と歌い出したりしたので、びっくり。しかも、義太夫っぽく歌ってて。歌舞伎ではこういうアドリブっぽい遊びもよくあるけど、文楽では珍しいのでは。

ちっちゃい悟空がたくさんでてきて、宙を飛び交った(本当に、ボールのように投げ合っていた)のがかわいい。最後は、竜と悟空が宙乗りで花道上から2階へ。悟空の蓑二郎の腰のあたりに人形を装着し、足は人形遣いのものという工夫で迫力満点。

2014年7月28日月曜日

7月26日 七月大歌舞伎 昼の部

「天保遊侠録」

真山青果ものらしい、セリフの応酬。

勝海舟の父小吉を橋之助。短期なだけど、子煩悩という、江戸っ子らしい男が似合う。その甥、庄之助を国生。女伊達では格好よく見えたけど、役柄のせいかもっさりした印象。

芸者八重次の孝太郎、その妹分の茶良吉を児太郎。小太郎はまだメークが板についていない感じで、動きもちょっとぎこちないか。

芝のぶが女中頭のような役で、セリフや出番が多くてうれしい。


「夫婦狐」

義経千本桜を思わせる、親を偲ぶ狐の舞踊。塚本狐を翫雀、千枝狐を扇雀。踊りを得意にしている家だけあって、安定感のある一幕。

いつも思うのだが、この兄弟、体のサイズが逆だったらいいのに。扇雀は女形にしては大柄だと思うのだけど…。翫雀のメークが、たまごに目鼻を描いたようで、ハンプティダンプティを連想してしまった。


「寺子屋」

仁左衛門の松王丸はやはりいい。重厚な語り口で前半の悪役っぷりから、後半の小太郎を思う情感あふれる演技まで、たっぷりと堪能。時蔵との夫婦もいい組み合わせと思った。

源蔵の橋之助、戸浪の菊之助もいいコンビ。今回の座組みはすごくよかった。

2014年7月24日木曜日

7月20日 七月大歌舞伎 夜の部

「沼津」

藤十郎の十兵衛と翫雀の平作という親子逆転。翫雀の爺さんに違和感がないのに驚く。扇雀のお米も加わり、本当の親子が親子を演じているので、やはりよく似ているし、肉親の情も深いような。

千本松原の場、股五郎の落ち延び先を明かせないと説得するところで、十兵衛が平作の手をとって刀の柄を触らせるのだが、どういう意味なのか。平作はこの後、刀をとって自害するわけで、自殺をそそのかしているように見えるのだが。


「身代座禅」

仁左衛門の右京のかわいらしく、チャーミングなことといったら!期待を裏切らない魅力だ。

奥方玉の井の翫雀も、不細工なんだけどかわいらしい奥方を好演。
千枝、小枝を梅枝と児太郎。やはり年上だけあって梅枝に安定感があるが、児太郎も所作がきれいだった。

太郎冠者の橋之助は過不足なく。軽妙な太郎冠者だった。


「真景累ヶ淵」

豊志賀の時蔵は、年増女がだんだん厄介になって行く様が恐ろしい。菊之助の新吉も、初めのころは献身的に看病しているのに、だんだん豊志賀がうっとおしくなっていくのがよくわかる。

お久の梅枝は可憐な若い女を好演。竹三郎の新吉伯父、勘蔵は、江戸の伯父さんってどうなのと思ったけど、以外にはまっていたのが流石。噺家さん蝶の萬太郎は、ちょっとやかましい感じが残念。もともとは落語の話なので、この役って結構キモだと思うのだが。

ところで、怪談なのに、客席が爆笑してしまうのはなぜなのだろう。くすっとなるくらいは分かるけど、げらげら笑うのってムード台無しだと思うのだが。


「女伊達」

孝太郎の女伊達に萬太郎、国生の男伊達。

国生の背が伸びて、男前になっていたのにびっくり。ちょっと前までぽっちゃりの男の子だったのに。

7月6日 第二回近松文楽(@ルネッサながと)

はるばる行ってきたルネッサながと。会場はちゃんと花道もあり、文楽の場合は舞台の床が下がる構造になっているそうで、人形が目線の高さにあって見やすいのもよかった。

舞台の前に、ドナルド・キーンと鳥越文蔵の対談。近松の作品はとてもよくできていて、アレンジなど手を加える必要はないと。あえて言えば、今は上演されることの少ない、生玉神社の段から通しで上演するほうがいい。近松文楽について、キーンさんははっきりとは言わなかったが、鳥越さんはちょっと否定的な様子で、激しく同意する。生玉神社の段を復活したのは良かったけどね。

その後、靖大夫、清志郎、勘市による解説。鑑賞教室とは違って、多少は文楽を知っている人向けということで、豆知識的な情報も。太夫の床本は師匠や先輩から借りて書き写すのだが、和紙がだんだん少なくなって高くなっているとか、見台を塗りなおすのもお金がかかるとか。太夫がどんなふうに座っているのか、後ろを向いて見せてくれたり。三味線の裏側は猫の皮、表は猫か犬。師匠や先輩は猫皮なので、よく見ると乳首の丸い痕があるのだそう。(舞台上では全く分からなかったが)

「曽根崎心中」

生玉神社の段を睦大夫と宗助。人形は勘十郎の一人遣いで。今回近くで観られたのでよくわかったのだが、一人遣いのときは、右手と左手を交互に遣うのね。

天満屋の段は呂勢大夫と藤蔵。この二人、力が拮抗していていいコンビだな。期待通りの素晴らしい舞台。

天神森の段は呂勢大夫、芳穂大夫、靖大夫に宗助、清志郎、燕二郎。心中も美しくて、堪能。杉本文楽が相当不満だったので、いい口直しができた感じ。

6月28日 シネマ歌舞伎「女殺油地獄」

冒頭に仁左衛門のトークショー。20歳の時にはじめて主役を演じた作品であることや、役の解釈などをお話になった。
与兵衛とういう男はとにかく見栄っ張り。セリフに何度も「男が立たない」とでてくる。けれど、弱い犬ほどなんとやらで、本当は弱い。殺しの場面は最初は怖がっているのだが、だんだん殺しを楽しむようになり、最後、我に返って怖くなる。
与兵衛とお吉の間に恋愛感情があるかのように解釈している作品もあるが、断じて違う。それは今の価値観。当時はご近所が世話を焼くことが当たり前だった。
シネマ歌舞伎は最初反対だった。生の舞台の空気を感じてほしい。ライブだったら、歳をとってからも若い空気を醸し出せるが、映像ではムリ。シワがハッキリ映ってしまう。けれど、お客さんが喜んでくれて、舞台を見に行くきっかけになるならいいかと。
孫の千之助には、自分が初演した20歳になったら演じるよう言っている。その時は自分が徳兵衛、おさわは兄の秀太郎、お吉を孝太郎で。

歌舞伎座での舞台をナマでも見ているけれど、シネマ歌舞伎は細かい表情までよく見えるので、また違った面白さ。


第二回 太棹の響

藤蔵の自主公演。文楽に縁のある御霊神社という、場所も素敵。
冒頭に藤蔵と呂勢大夫の対談、藤蔵のオリジナル三味線曲ののち、浄瑠璃「傾城阿波鳴門」というプログラム。

対談では、しゃべりが苦手という藤蔵をフォローするかのように呂勢大夫がしゃべくり倒す。こんなにおしゃべりな人だったとは。昔の太夫の話で、裃の着付けをする時にタイミングが合わないと怒られたり、背が低いので肩衣をかける時に首にあたってしまい、「無礼者!素麺の糸で首くくれ」と言われたり。むかしも、今でいうところの住大夫のような、恐いお師匠さんがいて、舞台にあがるときに楽屋のそばを通らなければならないので、関所のようだったとか。
藤蔵が40年の1月、呂勢大夫が12月生まれで歳が近いので、よく一緒にやっているが、初対面のときはお互い恐いヤツだと思っていた。藤蔵は元ヤンの噂があって、目付きが悪かった。呂勢大夫は太夫のくせに三味線抱えて三白眼で睨んでいたとか。
「傾城阿波鳴門」は大阪では暫くかかっていないが、演るならこの段のみ。最後までやるとがっかりするのだとか。淡路島でよく演るので、あちらの話と思われているが、大阪、玉造の話とも。

オリジナル曲は、震災にあった東北のために作ったのだとか。津波の様子などを表現しているそうで、緩急のある曲に聴きごたえがあった。三味線てこんなに表現の巾があったのね、と改めて思ったり。

浄瑠璃は流石、聞かせる。娘お鶴の健気さ、娘と分かっていても名乗ることのできないお弓の悲哀。短い時間だったけど、堪能しました。

6月29日 松竹大歌舞伎 中央コース(@岸和田)

猿之助(いまだにうっかり、亀治郎と書きそうになった…)、中車の襲名披露。

「太閤三番叟」

太閤秀吉を右近、淀の方を笑三郎、北政所を笑也と澤瀉屋一門の華やかな舞踊。

三番叟の翁を秀吉が勤めるという趣向で、太閤らしい、赤い衣装で登場。最後に立ち回りがあったりと、いつもの三番叟とはちょっと違って面白い。


「口上」

秀太郎が真ん中で仕切り役。芝居に出ないで口上だけに付き合うということもあるのね。
最年長の寿猿さんの話が何かツボにはまったらしく、笑いをこらえる舞台上の皆々。時間が押していたのか、澤瀉屋の人達の口上はあっさりしたものだったけど、温かみがあっていい口上だった。


「一本刀土俵入」

猿之助がお蔦で久しぶりの本格的な女形。やはり彼は女形のほうがいいと思う。中車が駒形茂兵衛で、2人が本格的に共演するのも、これまであまりなかったのでは。

猿之助のお蔦はほろ酔い加減の色気や気風の良さが魅力的。中車の茂兵衛は冒頭、おなかがすいて力が入らないという設定なのだが、ちょっと足りない人のように見えた。競演の人達は「先代の猿之助に似ている」と口ぐちに言っていたけれど、こんなものだったの?

中盤、寿猿と竹三郎の長老2人が昔の色ごとの話をするところが、ほのぼのとおかしい。いい味出してるなあ…。

6月15日 文楽鑑賞教室

「団子売」

始大夫の杵造、希大夫のお臼、ほか若手。

ずいぶん前になってしまったので記憶が…。明るく楽しい舞踊。


解説「文楽へようこそ」

靖大夫、龍爾、蓑紫郎


「卅三間堂棟由来」

鷹狩の段を睦大夫、喜一郎、気遣り音頭の段の中を芳穂大夫、清馗、奥を呂勢大夫と錦糸。

鷹狩の段からの上演なので、話がよりわかりやすかった。柳の精の幻想的な様子や、親子の情あり、で見応えたっぷり。呂勢大夫の美声で聞くと、母子別れの悲哀がしみる。