2011年5月24日火曜日

5月24日 前進座創立八十周年記念公演

「唐茄子屋」
いわゆる人情話なのだが、何か薄い。話の内容も、芝居も。所々、笑いを狙ったセリフややりとりがあるのだが、吉本新喜劇を思わせ、ちっとも笑えない。白塗りの役者は出てくるけど、歌舞伎ではなく、女優もでる現代劇だからかなぁ。なんか話に入り込めずに、白けてしまった。


放蕩息子が初めて自分の手で物を売って、働くことの意義を知り改心する…というお決まりのストーリーなのだが、市価の半額でもふつうには売れずに、意地悪な伯父に虐げられていると泣き言を言って、人情長屋の人達に助けてもらって完売ってなに?
商売の工夫がまるでないし、事業の継続性(ってほど大げさなものではないが)もゼロじゃん。しかも、最後に貧しい母子に会って、自分の境遇を反省するって、安っ。帰り際に売上金全額を置いていってしまうのだが、母は受取を拒否。でも、たまたま通りかかった大家に、滞納している家賃として取り上げられてしまったのを苦に自殺を図るってさあ、、、。幼い息子を残して死んでしまっちゃあだめでしょう?


「秋葉権現廻船噺」

時代物の歌舞伎らしい作品。前進座発足のころ上演されたきりだったのを、数十年ぶりに復活したのだとか。お家騒動の勧善懲悪もので、わかりやすい筋立てで楽しめた。まあ、ところどころ突っ込みどころは満載なのだが、歌舞伎だからね。

白波五人男でおなじみの日本駄右衛門が完全な悪役として君臨。
月本家の跡継ぎ、始之助役の高橋祐一郎が、姿よし(2階席から見た限りでは)、声よし、で注目だった。あんまりさわやか過ぎて、家の決めた許嫁を嫌がって、傾城にうつつを抜かしているという風には見えなかったけど…。

違和感があったのが、牙のお才。はじめ、日本駄右衛門の手下として登場するが、実は月本家の家臣、玉島逸当の弟、幸兵衛の妻だった…というのは、よくあるパターンだが、陥れた相手が義理の兄だったって気付けよ。いくら何年か、夫婦離れ離れになってたとしてもさ。



初めて前進座の歌舞伎を見たのだが、見終わって、贔屓の役者が出ていないと歌舞伎ってあまり面白くないのだなあということが分かった(苦笑)。初見でも、ハッとするようなカッコイイ役者さんとか、綺麗な役者さんがいればまた話は別かもしれないが。そういう意味で、今回、またぜひ見たいという気持ちにはなれなかった。残念だけど。

2011年5月21日土曜日

5月21日 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ「眠りの森の美女」

バーミンガム(ピーター・ライト版)の「眠り」は、ストーリー重視なのか、マイムが多く、ダンスはちょっと抑えめ?衣装やセットが全体的に茶色っぽくて、全体的的に暗く感じた。イギリス風なのかもしれないが。3幕はゴールドで華やかだったから、余計に引き立って見えた(狙いか?)
ツァオ・チーの王子が見たかったのに、見せ場が少なくてちょっと物足りない。生で初めて観たけど、ジャンプは高いし、足はよく開いてるし、迫力があった。もっとたっぷり観たいなあ。
オーロラ姫の佐久間奈緒も初見だったが、いつも眉間を寄せて悲壮な様子に見えて、オーロラの幸福感が感じられなかったのが、残念。

よかったのが、リラの精のジャオ・レイ。高潔で威厳のある雰囲気が素敵だった。この役はあまり踊らなかったので、次回はもっと踊りを見てみたい。オーロラなんかもよさそう。ガラポスは代役だったようで、マリオン・テイトという人。パンフレットに名前が見当たらないので、まだソリストとかいうポジションではないのかな?でも、芸達者で見ごたえあり。このカンパニーのガラポスはあまり誇張されすぎていないのもいい。

3幕で、長靴をはいた猫や青い鳥の他に、赤ずきんと狼が踊るのがピーター・ライト流?猫もかぶり物をしていたり、かぶりもの好きなのかな。真夏の世の夢でもロバがかぶってたし。こういう演出は子ども向けにはいいのかも。

2011年5月18日水曜日

映画「小さな村の小さなダンサー」試写会&トークショー

ツァオ・チーのトークショーが最初に20分ほど。前日のチャリティー公演で、寄付を募った際に多額の募金をしてくれた人がいて、自分がやっていることの意義を感じたとか、3月11日の地震のときに来日していて、船酔いみたいな感じで驚いたとか、あれだけの大地震にもかかわらず、ホテルに戻ったらちゃんと機能していたことや、帰宅困難者の人たちが秩序だって歩いているのに感心したとかいう話が。ただ、進行役の男性モデルがいまいちで…。質問をツァオ・チーに伝えるのはプロが翻訳していたのに、答えを日本語に直すのはなぜか彼が。それが、正しい訳ならいいのだが、変に意訳しちゃったりして。バレエのことはよくわからないと言っていたので、なぜ彼が選ばれたのか疑問。あらかじめ用意しておいた質問だけで、もっと聞いてほしいことを追加で質問してくれることはなかったので、もやもや感が残った。

今回の来日公演で踊る「眠りの森の美女」は伝統的な演出や衣装、振付と、オーロラ姫が目覚めたあとにもパ・ド・トゥがあるところが見どころ、だとか。土曜日の公演が楽しみww

映画自体は2回目だったけど、改めて楽しめた。ヒューストン・バレエ団の振付は近代的にアレンジされたもので、あまり好みではなかったのだけど、改めて踊りを見て技術力の高さに感動。ジャンプが高くて美しい。

ただ、改めて見ても、リー・ツンシンの最初の結婚はグリーンカード取得のために見えてしまう。中国に残した家族への心配がどうしてもぬぐえなかったり、エリザベスがどうしてもキャリアを諦められなかったりしたことがすれ違いを生んだのだろうという描写はあったけど、愛しているならそういう困難は乗り越えられるのではと思ってしまったのかな。

5月17日 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団

「ダフニスとクロエ」

初見だったのだけど、ストーリー性の強い作品。あらすじを読んでいなければ、何が起こっているのかわからないかも…。愛し合うカップルがいて、横恋慕とか、すったもんだあって、最後はハッピーエンド…という展開は、同時に上演された「真夏の夜の夢」と共通か。
近現代っぽい音楽があんまり好きではないなぁ、と思って後で調べてみたら、ラヴェルの作品だった。ボレロもそうだけど、近現代の作品って、振付も含めて苦手だ。調和が保たれず、不協和音というか、わざとバランスを乱すようなところが。
最後の群舞が圧巻。


「真夏の夜の夢」

吉田都さんの踊りが見たくて。今回はタイターニア役。演劇で何度か見たことのある作品だったので、タイターニアって女性のメーンキャストではないのでは?と思っていたが、バレエでは違うらしい(笑)。ドン・キホーテでもそうだけど、バレエでは主役が変わってしまうようことがよくあるのね。

踊りは、端正で危なげがなく、素晴らしかった。初めて舞台で見たけど、小柄なのに、目を引きつけられる。手足の長さとか、西洋人の中に入ると身体条件は決してよくないのに、他のどのダンサーにも負けていないのはさすが。

パック役のアレクサンダー・キャンベルが、意外にマッチョで、最初違和感を感じたけど、踊りは素晴らしい。ピルエットなんて何回回ったんだろう?こういう道化師的な役は、小柄で細身のダンサーが演じるものだという、勝手な先入観があったのだが(だって、王よりもガタイがいいんだよ?)、踊りの力に説得されたとうか。

ボトム(ロバート・パーカー)がチャーミングな踊り。ロバに変えられたところではポワントで(!!)踊っていて、びっくり。かぶりものして、さらにポワントでって、かなりハードルの高い役だよねえ。

オベロン役のセザール・モラレスは、都さんといいバランス。端正な踊りで好印象。

インドの男の子役の子役、東京バレエ学校の子どもらしいのだが、なんか素人っぽい(笑)大人に手をひかれるまま、右へ左は歩いているだけ、という感じで、歌舞伎の子役のようだった。そういう演出なのかな?


東日本大震災へのチャリティー公演だったので、休憩時間と終演後にダンサーたち(当日出演のなかったツァオ・チーや佐久間奈緒も来ていた!)がロビーで寄付を募っていたのだが、みなさん写真を撮るばっかりで、募金をする人は少数…。傍で見ていて、何だか恥ずかしくていたたまれなくなった。チケットを買うこと自体が支援の一環なのだから、それ以上何かするかどうかは本人の自由だけど、写真を撮るなら、少しでも募金すべきでは?ファンだったら協力しようよ!

2011年5月14日土曜日

映画「ブラック・スワン」

チャイコフスキーの音楽が、様々なアレンジで全編に使われていて、いやがうえにも気分が高まる。
主人公のニーナ(ナタリー・ポートマン)が追い詰められていくシーンがリアルに痛そうで、眼を逸らしたくなったけど、話に引き込まれた。ニーナはテクニックもあり端正に踊るけと、オディールの妖艶さが出せないことに苦しみ…という設定はよく分かるのだけど、最後までその妖艶さが出せたかは疑問。黒鳥に変化してしまうことで、何か吹っ切れたのはわかったけど、妖艶さとは違うような…。

ポートマンの踊りは、予告編で観たより悪くなかった。もちろん、足のアップや引きの映像では代役を使っているのだろうけど、あまり違和感を感じなかった。まあ、最大の見せ場であるはずのオディールの32回転のフェッテがなかったり、踊りそのもので感動するというレベルまでは行っていないけど。

2011年5月11日水曜日

5月9日 サンクトペテルブルグ・バレエ・シアター「白鳥の湖」

定評があるという、イリーナ・コレスニコヴァのオデットは、しっとりというより、じっとりと粘っこいくらい。曲のテンポもこれまで観たどの「白鳥」よりもスローで、濃厚。歌舞伎だったら、「たっぷりと!!」と掛け声がかかるところだ。凄いのだけど、最後のほうは、もうおなかいっぱいという感じ。

ジークフリード王子のオレグ・ヤロムキンは、薔薇色の頬でチャーミング。まさしく王子という風情。こういう王子っていそうでいないかも。

コールドも素晴らしいのだが、女性で2人ほどいた日本人ダンサーのうちの1人がなんだかいっぱいいっぱいという感じで…。違う意味で目が離せなくて困った(苦笑)日本公演だから、普段よりも目立つところで踊らせてもらったのかなあ。結構前の方の席だったので、コールドの人たちも含めて、ダンサーの表情がよく見えたから、余計気になったのかも。

1幕、2幕は全体的にスローペースで、王子やパ・ド・トロワの男性ソロなんかは、ジャンプの滞空時間が相当長くないと、曲にのれなくなってしまうのだが、ちゃんと、テンポに合わせて長く飛んでいたので感心した。


対して3幕はアップテンポ(笑)。前半の遅れを取り戻すかのように、”巻き”で進んでいく。

オディールの悪女っぷりは、さすが。オデットとはまるで別人で、動きもきびきびしてるし、王子を誘惑するところや、嘲笑する表情が魅力的。ただ、見せ場のグラン・フェッテの後で曲を止めて、拍手&お辞儀にしちゃうのはどうよ?テクニック的には、数回ダブルが入ったけど、ほとんどシングルで、「超凄い」というほどではないし(むしろ、あのスローテンポで2幕を踊りきるほうが凄いと思う)、曲の区切りでもなんでもないところで、ぶつっと曲が切れてしまうのは違和感がある。半端なところから曲が再開して、踊りだす王子もなんだかなあ…だったし。

4幕もあっさり目。最後は、ロットバルトを倒して、2人は結ばれ、めでたしめでたし…だったけど、これもなあ…。王子は決定的なミスを犯したのだから、ハッピーエンドはあり得ないでしょう?ロットバルトを倒すんなら、初めからやっとけ、と思ってしまう。

コレスニコヴァは、踊りはもちろん凄いのだが、むしろ演技派なのだろう。オデットやオディールのセリフが聞こえてくるような熱演は見ごたえがあった。本人もインタビューで、テクニックよりも演技、と言っていたし。
最後にオーケストラ。震災の影響で公演が延期になり、当初予定していた劇場の管弦楽団ではなく、東京のシアター・オーケストラというところだったのだが、う~ん。。。ファンファーレでトランペットが外しちゃったり、ところどころでミスが気になった。