2025年6月16日月曜日

6月16日 文楽鑑賞教室 Dプロ

「五条橋」 希の牛若丸に咲寿の弁慶。どちらも難ありで、全体的にがちゃがちゃした感じ。ツレは碩、薫。 三味線は団吾、友之助、清公、清允、藤之亮。太夫と一緒で、まとまりのない感じ。 人形は和馬の牛若丸に勘介の弁慶。若手の懸命さはいいが、やはりまだまだの感じ。和馬の牛若丸は体の芯が傾いでいる感じだし、動きも少し重い。扇を広げきらないなど小物づかいにも課題が残った。勘介も、人形の重さに負けているのか。薙刀の扱いに苦戦している感じで、もっと刃から遠いところを持つ方が格好いいのでは。 解説は勘次郎。左を玉延、足を簑悠。 「三十三間堂棟由来」 中を靖・清志郎。 千歳の悪いところを真似しているのか、顔で語っている感じ。清志郎はキリッとした演奏。 奥を織・藤蔵。 お柳の嘆きが激しすぎというか、植物なのだからもっと静かな感じでいいのではと思う。藤蔵とのコンビは相乗効果で派手。熱心なファンがいるのは結構なことだが、「たっぷり」の大向こうは演目に合っていない。 人形は一輔のお柳がしっとりと美しい。簑紫郎の平太郎は颯爽とした男前。勘昇のみどり丸は可愛らしい。

2025年6月12日木曜日

0612 イキウメ「ずれる」

会社社長の輝(安井順平)と弟の春(大窪人衛)が暮らす家のリビング。療養施設から戻ったばかりの春は精神的に不安定な様子で、ネットで知り合ったというラディカルな環境活動家、佐久間(盛隆二)を家に引き入れ、何やら企む。優秀な家政婦兼秘書の山鳥(浜田信也)は腹に一物ある不穏な感じ。魂魄のずれを直して不調を治すという伝説の整体師(森下創)も怪しい動きを見せる。はじめは捉えどころのない感じだったが、登場人物の事情がわかってくるに連れ、どんどん引き込まれていった。 魂魄を魂=精神と魄=肉体と捉え、整体師が魂を引っ張ると幽体離脱してしまうという設定が面白い。魂は目に見えないものが見え、動物とも通じ合える。幽体離脱した春が関わると、99%遺伝子が同じという犬が狼に変じたり、豚が猪に変わったりし、野生化した動物が野に放たれる。人間に飼われたままの方が長生きできるという輝に対し、わずかでも自由になれる方がいいという佐久間や春。リタイアした両親が暮らすインドネシアの島がパンデミックに見舞われ、助けを求める電話を冷たく突き放す春を、輝は「何不自由なく育ててもらったくせに」と非難するが、「父親は命令ばかり、母親は禁止ばかりで不自由だった」という春。同じ場所にいても見えているものが違い分かり合えない。出来る秘書山鳥は物腰柔らかだが、父親が輝の会社のために自殺に追い込まれた過去があり、復讐のために生きていることが明かされる。浜田の演技が底知れない不気味さ。ソファにもたれた輝を照らすごく絞った照明が効果的。他にも天井を照らす水槽のような光など、灯りの使い方が印象的だった。 牛舎で活動しようとしていたところを警察に見つかり、幽体離脱したままの春を置いて佐久間が逃げてくる。春の魂を肉体に戻そうと、収容された病院を探すが、結局そのままに。ただ一人常識人だった輝が最後、警察の訪問に力無く答えるラストはちょっと未消化な感じもしたが、ざわざわした感じが余韻として残った。

2025年6月7日土曜日

6月7日 文楽鑑賞教室 Bプロ

「五条橋」
咲寿の牛若丸、靖の弁慶、ツレに小住、碩、薫、三味線は清丈、友之助、清公、清允、藤之亮。 出だしの清丈の三味線がよく響き、華やか。咲寿の牛若丸は爽やか。靖の弁慶は太さはあるが、体の芯がグラグラしている感じ。

人形は玉路の弁慶が力一杯で大きさもあり好印象。簑太郎の牛若丸は、薄衣が顔に被さってしまうなど冴えない。

「三十三間堂棟由来」

中を希・清馗。
噛み合ってない感じ。

奥は呂勢・宗助。 音曲を聴いているという華やかさ、安定感。宗助はミスタッチが多かったか。

柳の葉が降ってくるところで、お柳(勘弥)、平太郎(玉助)の人形と、平太郎母の紋秀の頭に葉が刺さるハプニングにちょっと笑ってしまった。平太郎の左がサッと取り除いていたのはよき働き。みどり丸は簑悠。

2025年6月6日金曜日

6月6日 サファリ・P「悪童日記」

2017年の初演と19年の再演を観て以来だが、骨格部分は変わらないものの再演を重ね進化しており、だいぶ印象が異なった。
まず、出演者が2人増えて5人になり、双子を取り巻く登場人物も増えてシーンがより複雑になった。舞台装置の平台は白っぽいグレーに変わっていたが、出演者が様々に動かして道になったり、瓦礫になったり。(終演後のロビーで、平台のキーホルダーのガチャを売っていたくらい、劇団を象徴する存在)今回舞台後ろのスクリーンにセリフの字幕(日英)やアニメーションのような背景が映し出されたのは、理解の助けにもなったが、見るべきところが増えて疲れる感じも。 双子役は達也ともり裕子。性別も違えば身長差も大きく、外見的には全く似ていない2人だが、シンクロした動きで一体感を見せる。森は短髪で小柄な体つきは少年のよう。
双子以外はそれぞれ複数の役を演じるのだが、モノトーンベースのシンプルな衣装のままで、役によって特徴的な仕草を加えて演じ分ける。圧巻だったのは、おばあちゃん役の佐々木ヤス子で、背中を丸めながら上着の背を引っ張って腰の曲がった様子を表し、鼻を擦る特徴的な動きでクセのある人物を体現。話ぶりも偏屈ババアそのものかと思ったら、兎っ子の母親になると疲れた女にガラリと変わり、また、刑事役では高圧的な感じと変幻自在。兎っ子と女中の2役は芦屋康介で、性的に虐待される若い娘を演じる背の高い男性が妙に艶かしい。司祭役の辻本桂は一見まともそうだが、底知れない雰囲気を醸す。 上演時間は1時間15分ほどだが、濃密な時間だった。

2025年6月5日木曜日

6月5日 文楽鑑賞教室 Aプロ

「五条橋」 芳穂の牛若丸、南都の弁慶、亘、聖、織栄に三味線は団吾、寛太郎、錦吾、燕二郎、清方。 下手側の席だったが、芳穂はともかく、南都の太い声が以外と届かない。三味線含め、全体的にまとまりに欠ける感じ。 人形は勘次郎の牛若丸が軽々としてよき。傘をさっと翻すところなど、小物使いも手慣れた感じ。弁慶は玉翔。 「三十三間堂棟由来」 平太郎住家より木遣り音頭の段の中を睦・勝平、奥を藤・燕三。 藤は声のコントロールが安定していて聞きやすい。三味線の木遣り音頭が軽快。 みどり丸は子役ながら木遣り音頭での舞?など、しどころが多い役。玉延の動きが丁寧で好感が持てる。簑二郎のお柳、玉志の平太郎、簑一郎の平太郎母。進ノ蔵人は休演の文昇に変わり玉勢。