第14回の永楽館歌舞伎。市長が変わってどうなることかと思ったが継続されるようで安堵。
「袖萩祭文」
壱太郎初役の袖萩がよい。目を瞑ったまま、娘お君に手を引かれて花道から登場。おぼつかない足取り、母娘が互いを労る様子にじんとする。門の外で「せめて娘に一目…」と懇願するところは血反吐を吐くような慟哭に涙を誘われた。三味線も上手で、かじかむ手で途切れ途切れに弾く感じがあり、竹本の糸にも乗ってちゃんと役になっている。お君役は市川侑里。三味線を弾く袖萩の頭の上に手拭いをかざして雪除けにする型は初めて見たが、健気さが涙に追い打ちをかける。着物を脱いで袖萩に着せかける時、背中合わせに体ごと覆い被さって裏表に被せるのは舞台が狭いから?
貞任の愛之助は残り30分ほどに登場。ぶっ返りも決まって座頭の風格たっぷり。「父さんいのう」と縋り付くお君に復讐を踏みとどまったり、宗任との立回りがあったりと、たっぷり見せるのは澤瀉屋(二代目猿翁)の型らしい。(口上で歌之助が言ってた。地歌舞伎の演出を取り入れたそう)ただ、舞台と花道を行ったり来たりするのは忙しないと思った(永楽館の狭さのせいかも)。
宗任の歌之助は顔が赤い過ぎに見えたが、堂々たる武者ぶり。顔をすると愛之助と似ていて、兄弟であることに違和感なし。けど声を聞くと兄の橋之助に似てる。
傔状の九團と浜夕の千寿はともに老け役をするには若過ぎるのはしかたない。
「口上」
愛之助を中心に上手に歌之助、孝太郎、下手に九團次、壱太郎が並ぶ。
愛之助はいつもはすぐに出番があるのですぐ顔をするのだが、今回は出番が遅いので、出石の街を散策していると。
歌之助は数年前に父が演じて憧れていた宗任をこんなに早くできたと感謝。「この後九團次さんが永楽館(永楽館歌舞伎?)をお題に謎解きをする」と無茶振り。 目を白黒する九團次。
孝太郎はずっと来たかった永楽館に初お目見えが叶った。愛之助から「立役なら来てもらえそう」と声をかけられ、「立役でもいい」と応じたのだとか。
壱太郎は愛之助の妹役から、恋人、今回は妻役に。将来は母親役を演じられるくらい続いて欲しいと。恒例のご当地土産紹介は、コウノトリ のこーちゃんのぬいぐるみ大小と、モケケ?のコウノトリ バージョン、そばバージョン。
九團次は「(謎解きを考えて)他の人の口上が全く耳に入らなかった」としどろもどろ。「新そばの出る永楽館とかけて、その心は…」と言いかけて、会場の雰囲気がおかしいことに気づき、隣の壱太郎に何か聞いた様子。「謎解き」が何かを勘違いしていたようで、「代わりにパントマイムやります!」と強引に転換し、「イカで首をつる」のパントマイム。グダグダだけれど笑いはとれた。
「高坏」
愛之助の次郎冠者、九團次の主人、歌之助の太郎冠者、壱太郎の高足売り。
セリフの間合いが面白く、よく笑った。肝心のタップは、ドタドタとうるさく、下駄の前後の歯を交互に打ってタカタカとするとリズムが良くない。
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