2024年11月30日土曜日

11月30日 大槻能楽堂

「呂蓮」

和泉流の三宅右近、右矩、近成の親子共演。
やはり和泉流は私には笑えないなぁ。ただ旅の僧が可哀想。

「井筒」

友枝昭世のシテとあってとてもとても期待していたのだが、今ひとつ響かず。多分、井筒の話に共感できないから。
橋掛に近い脇正面席だったので、シテの登場を間近で見られたのはよかったが、あまり動きはないし、謡にも特別なものは感じられなかった。ただ唯一、最後に薄をかき分けて井戸を覗くところは景色が見えた気がした。
喜多流の地謡は力強く、空間に広がっていく感じというのは何となく分かった。(対して観世流は内に集中していく感じか)
宝生欣也のワキ、三宅近成のアイ。

2024年11月23日土曜日

11月23日 立川立飛歌舞伎

新幹線の遅れで口上は見られず。解説の終わりごろから。

「新版 御所五郎蔵」

木ノ下裕一が補綴し、滅多にかからない時鳥殺しを含めて再構成。お馴染みの御所五郎蔵と、時鳥と傾城逢州の姉妹の話が錯綜する。

妹の時鳥(壱太郎)は浅間巴之丞の愛妾となるも、後室百合の方にうとまれなぶり殺しにされる。愛之助の百合の方は冷酷な感じで、壱太郎の時鳥が美しくも哀れ。

お馴染み、渡りセリフは長い両花道で颯爽と。土右衛門の中車と並ぶと、愛之助の五郎蔵が格好いいこと!姿勢がいいのでシュッとして見える。一方の中車は化粧がマンガっぽいというか。
五郎蔵の子分に松十郎、翫政、愛三郎ら。

五郎蔵の妻、傾城皐月の笑也が若々しく美しい。

大詰めで、金を工面するために去り状を書いた皐月(笑也)に怒り、皐月の打掛を着ていた逢州を殺してしまう五郎蔵。逢州と並んで歩いていたはずの土右衛門が消えていて、不適な声とともに姿を表すと夜だったのが急に明くなるのがよく分からん。結末も唐突な感じで、皐月が土右衛門の連判状を拾ったことで百合の方らのお家のっとりの企みを知った巴之丞らが駆けつけ、手柄を理由に五郎蔵の追放が許され、時鳥、逢州は念入りに弔うから安心せよって、強引過ぎないか?

「玉藻前立飛錦栄」

玉藻前+道成寺×変化舞踊みたいな感じ。壱太郎が白拍子から花売り、座頭など9役を早替わりで踊り分け、最後は九尾の狐になって宙乗りという大活躍。踊りは上手なので見応えあったけど、玉藻前なら鐘より殺生石では?と思ったり。

立川スカイガーデンは2500席ほどという大箱で、歌舞伎には向かないのでは…。左サイド席だったのだが、舞台の半分は見えず、代替のスクリーンは凝ったカメラワークが逆効果。舞台にせよ、花道にせよ、見えない方を引きで見たいのに半端に寄っている。喋っている人だけでなく、受けの芝居も見たいし。解説で壱太郎がカメラワークに凝っているといっていたが、求めているのはそういうのじゃないのよ。生の舞台を見ているはずなのに、テレビ中継を見ているような物足りなさ。チケットは安かったけど、次は正面席以外はないかな。こんなに舞台が見えなくて、なんの公演に使うのだろう。

2024年11月18日月曜日

11月17日 文楽公演 第2部

「靱猿」

藤の猿曳、希の大名、咲寿の太郎冠者、織栄と文字栄がツレ。三味線は清志郎、清丈、錦吾、清允、藤之亮。
違う芝居を寄せ集めたみたいに声の調和が取れてなくて、とても聞き苦しい。藤は楽しそうだが、希は発声が苦しそう。咲寿は高らかに語るのはいいが、タガが外れたみたいだし。狂言と話の筋は同じだが、大名が女で、首がおかめなのは何で?

人形は紋臣の大名、玉誉の太郎冠者、簑二郎の猿曳、玉彦之猿。猿の人形は子どもくらい大きく、ちょこまかとよく動く。最後、全員で舞うときに、いったん後ろに下がって背中を向けたのはどういう演出なのか。身繕いするわけでもなさそう。

「仮名手本忠臣蔵」

山崎街道出合いは碩・寛太郎。
碩の瑞々しさ、寛太郎のキッパリした音が正統派な感じ。

二つ玉は靖・団七に清方の胡弓。
靖は定九郎の悪っぷりがよく、与市兵衛も役に合ってる。

身売りは織・藤蔵。
揚々と語り上げるせいか、おかるが可愛くない気がする。「たっぷりと」の大向こうは違くないか?

勘平腹切りは錣・宗介。
水分多めな感じで情感たっぷり。女房の嘆きは涙に濡れてる。宗介の三味線は堅実だけど、切場なのでもう少し華々しくてもと思った。錣の語りとのバランス?

一力茶屋はオールスターキャスト。由良之助の千歳が流石の風格。力弥の碩も若々しく、おかるの呂勢は艶のある声で聞かせる。平右衛門の織は張り切って、煩いくらい。下手に置かれた白木の演台はこんなに高かったろうか。スポットライトが眩しい。
冒頭は店の入り口で、三味線なしで一力亭主、十太郎、喜多八、弥五郎らのやり取り。室内に入って三味線とともに千歳らが床に。
三味線は前半が燕三、後半が富助。廓の華やかさは燕三に分があるか。

人形は勘十郎の勘平が錣の語りに乗って観客を惹きつける熱演。定九郎の玉勢は大きさがあってよい。一輔のおかるが在所での地味な出立から打って変わって一力ではたおやかで色気がある。由良之助の玉男、玉翔の力弥、簑紫郎の伴内ら適材適所。玉助の平右衛門は太夫の語りと相まってドタドタと煩いくらい。

2024年11月10日日曜日

11月10日 永楽館歌舞伎

第14回の永楽館歌舞伎。市長が変わってどうなることかと思ったが継続されるようで安堵。

「袖萩祭文」

壱太郎初役の袖萩がよい。目を瞑ったまま、娘お君に手を引かれて花道から登場。おぼつかない足取り、母娘が互いを労る様子にじんとする。門の外で「せめて娘に一目…」と懇願するところは血反吐を吐くような慟哭に涙を誘われた。三味線も上手で、かじかむ手で途切れ途切れに弾く感じがあり、竹本の糸にも乗ってちゃんと役になっている。お君役は市川侑里。三味線を弾く袖萩の頭の上に手拭いをかざして雪除けにする型は初めて見たが、健気さが涙に追い打ちをかける。着物を脱いで袖萩に着せかける時、背中合わせに体ごと覆い被さって裏表に被せるのは舞台が狭いから?
貞任の愛之助は残り30分ほどに登場。ぶっ返りも決まって座頭の風格たっぷり。「父さんいのう」と縋り付くお君に復讐を踏みとどまったり、宗任との立回りがあったりと、たっぷり見せるのは澤瀉屋(二代目猿翁)の型らしい。(口上で歌之助が言ってた。地歌舞伎の演出を取り入れたそう)ただ、舞台と花道を行ったり来たりするのは忙しないと思った(永楽館の狭さのせいかも)。
宗任の歌之助は顔が赤い過ぎに見えたが、堂々たる武者ぶり。顔をすると愛之助と似ていて、兄弟であることに違和感なし。けど声を聞くと兄の橋之助に似てる。
傔状の九團と浜夕の千寿はともに老け役をするには若過ぎるのはしかたない。

「口上」
愛之助を中心に上手に歌之助、孝太郎、下手に九團次、壱太郎が並ぶ。
愛之助はいつもはすぐに出番があるのですぐ顔をするのだが、今回は出番が遅いので、出石の街を散策していると。
歌之助は数年前に父が演じて憧れていた宗任をこんなに早くできたと感謝。「この後九團次さんが永楽館(永楽館歌舞伎?)をお題に謎解きをする」と無茶振り。 目を白黒する九團次。
孝太郎はずっと来たかった永楽館に初お目見えが叶った。愛之助から「立役なら来てもらえそう」と声をかけられ、「立役でもいい」と応じたのだとか。
壱太郎は愛之助の妹役から、恋人、今回は妻役に。将来は母親役を演じられるくらい続いて欲しいと。恒例のご当地土産紹介は、コウノトリ のこーちゃんのぬいぐるみ大小と、モケケ?のコウノトリ バージョン、そばバージョン。
九團次は「(謎解きを考えて)他の人の口上が全く耳に入らなかった」としどろもどろ。「新そばの出る永楽館とかけて、その心は…」と言いかけて、会場の雰囲気がおかしいことに気づき、隣の壱太郎に何か聞いた様子。「謎解き」が何かを勘違いしていたようで、「代わりにパントマイムやります!」と強引に転換し、「イカで首をつる」のパントマイム。グダグダだけれど笑いはとれた。

「高坏」

愛之助の次郎冠者、九團次の主人、歌之助の太郎冠者、壱太郎の高足売り。
セリフの間合いが面白く、よく笑った。肝心のタップは、ドタドタとうるさく、下駄の前後の歯を交互に打ってタカタカとするとリズムが良くない。

2024年11月8日金曜日

1108 地主薫バレエ団「運命が織りなす古典と現代のダブル・ビル」

「ラ・バヤデール」

婚礼の場のみだが、幕前で主要人物の関係を示すプロローグをつけ、物語を分かりやすく。
ガムザッティの葭岡未帆はテクニックがしっかりして踊りに不足はないが、小柄で童顔なのがニンではないというか。純粋にソロルが好きな娘みたいに見えた。ニキヤのソロでは意地悪そうな顔をしていたけど。 ニキヤの山崎優子はスラリとした容姿が憂を帯び、悲劇を浮き上がらせる。この2人だったら逆の配役でもと思うが、ニキヤがより似合うかも。ソロルの宗近匠も大技を決め、見応えあり。
デベルティスマンは黄金の神像の巽誠太郎が美しい手足の動きで神々しさを描出。壺の踊りは奥村唯で、子役の壺の蜜を狙う2匹の蜂を率いて可愛いらしい。

「運命」

ベートーヴェンの交響曲第五番を使ったコンテンポラリー。運命を奥村康祐、人生を唯が勤め、総勢約40人の群舞。
奥村康祐はしなやかな手足の動き、ジャンプの軌跡が美しい。ラスト、ロープにぶら下がって宙吊りに複雑なリフトも華麗にこなす。唯と並ぶと体つきもよく似ている。
主人公は人生とのことで、時に運命に背中を押され、時に行手を遮られ、最後には運命の先を行くように見えた。
アンサンブルはゲストの多い男性陣に比べ、劇団員ばかりの女性陣がよく揃っていた。

2024年11月3日日曜日

11月3日 祇園をどり

祇園東は少人数(舞妓6+1、芸妓6)ながら、踊りがしっかりしていて華やか。双六で京都の名所を巡る趣向で、嵐山、鞍馬、東山、伏見稲荷、金閣寺と進んで、八坂神社であがり。夏の船遊び、雪の金閣寺と四季も巡る。場面ごとに別の人が踊っているのかと思ったら、芸妓は1人2役くらいこなしていてびっくり。場面転換がスムースでよかったが、セリで捌けるばっかりなのは飽きる。
客席は外国人観光客が多くて、当日券で結構入っていた。

2024年11月2日土曜日

11月2日 文楽公演 第1部

「仮名手本忠臣蔵」の大序から四段目まで。いろいろ思うところはあれど、やっぱり忠臣蔵はいい。

大序の鶴が岡兜改めの床は若手のリレーで、碩、織栄、聖、薫、亘、小住に燕二郎、藤之亮、清方、清允、錦吾の順。トップの碩、締めの小住がやはり目立った。聖もしっかりした発声に好感。 
恋歌の段は睦の師直、南都の顔世、靖の若狭助。睦の師直は悪くない。

人形は主遣いも頭巾を被っていたが、判官が初めから顔を上げていてあれ?と思った。顔世が首を震わせていたのはなぜだろう。

二段目の力弥使者は 希・友之助。小浪と力弥のいい場面なのに、なんか軽い。

本蔵松切は芳穂・錦糸。安定感。

三段目の馬場先進物は亘・清公。チャリがなんかいやらしい。

おかる文使いは睦・勝平。師直と違っておかるはちょっと厳しいか。

殿中刃傷は呂勢・清治。もう何度目だろう。安定の面白さ。師直が判官をいびるところは絶品で、大笑いでは拍手も出た。見台も素敵だった。
大笑いのあと、師直の口が開いたままになってしまい、左遣いがそっと直していた。 

裏門は小住・清馗。大序に比べるとこちらは今ひとつ。小住の語りに亘を感じてしまうのは同じ師匠に習っているから?

四段目の花
籠の段は藤・清友。

判官切腹は若・清介。通さん場にしていたが、あまり重々しさがなく、さらさらと過ぎていった感じ。「由良之助は」「未だ参上…仕りません」の件もあまり溜めないので。三味線で心情が分かりハッとするなど。 盆が回ると「待ってました」の掛け声。この場面で待ってましたはないと思う。 

城明け渡しは薫・清允。(筋書き名前はないが、御簾内にはもう一人三味線がいたような)
たった一言なのだけど、的確に語るのは難しいと思った。

人形は和生の判官がさすがの品格。勘十郎の勘平、一輔のおかる、玉男の由良助と適材適所。簑紫郎の伴内が軽快。


16日に再見。
清馗の三味線の糸が切れた。
城明け渡しは聖で、タイミングが少し遅かったようで、玉男が少しイラついたようす。声はよく出ていて、語りは悪くないと思った。