「於染久松色読売」
土手のお六と鬼門の喜兵衛、柳島妙見の場から小梅莨屋、瓦町油屋までだが、これだけでは話のすじがさっぱり分からない。刀の折紙を隠した嫁菜の藁包は、売約済みだからと頑なに善六に売らなかったのに、何故か嫁菜売りが持ったままなのもよく分からん。が、玉三郎のお六と仁左衛門の喜兵衛の息のあった調子が見られるだけで価値はある。油屋に強請に入って態度を豹変させる面白さ、小悪党らしい狡さや強かさがたまらない。
番頭善六の千次郎が大舞台で健闘。中間権平の松十郎と歌舞伎座の真ん中でやり取りするのは胸熱。
丁稚久太の松三はどこぞの御曹司かと思ったら松緑の弟子だった。可愛らしい顔立ち。
「神田祭」
仁左衛門と玉三郎がイチャイチャしてるだけで、なんでこんなに嬉しいのか。客席中が幸福感に包まれる。動きがちょっと重たげなところもあったけど、2人が元気で共に舞台に立っているのがありがたい。
若い者の筆頭にやゑ亮と愛治郎。
「四季」
春の紙雛は菊之助の女雛に愛之助の男雛が雅で美しい。五人囃子に萬太郎、種之助、菊市郎、菊史郎、吉太郎。吉太郎は太鼓方をきっちりと。
夏の魂まつりは橋之助の若衆と児太郎の舞妓の仲を取り持つ太鼓持の歌之助が冷やかしてニヤニヤするのが板についてる。橋之助は痩せて顔がスッキリしているのに対し、児太郎は舞妓にしてはゴツいかも。仲居の梅花、芝翫の茶屋の亭主。
秋の砧は孝太郎の一人舞台。夫を待つ妻の寂しさを情感たっぷり。
冬の木枯は木の葉の男女がトンボを切ったり、側面したり、リフトしたりとアクロバティックな群舞が意外に楽しい。みみずくの親玉?の松緑はコントのような扮装。真ん中で踊った木の葉の女、左近が小柄で可愛らしく、踊りも上手い。
2024年4月21日日曜日
4月21日 四月大歌舞伎 昼の部
「夏祭浪花鑑」を幕見で。
愛之助の団七、菊之助の徳兵衛は去年の博多座以来で、歌六の三婦、米吉のお梶が初顔合わせ。住吉鳥居前では、団七を迎えに来る三婦とお梶が親子のようでほのぼのする。市松の秀乃介は歌昇の次男だそうで、小作りな顔立ちが愛らしい。愛之助の団七は安定感があり、力みなく自然に団七になっている。菊之助は2回目とあって、板についてきた。
床屋の客でりき彌。下剃りの三吉は巳之助で、スッキリとしていいアクセントになっている。
磯之丞の種之助は小柄なせいか子どもっぽく見え、莟玉の琴浦も傾城というには町娘の風情で、共に映らない。佐賀右衛門の松之助は歳を重ねて動きに鈍さもあるが、まだ上手い。
三婦内は歌六はすっきりと格好いい。鴈治郎の愛嬌のある三婦を見慣れていたので新鮮。昔悪だったというからには、こういう男前な感じが本来かもと思う。お辰は愛之助が二役。キリリとした化粧が吉弥のようで、それは悪くないのだが、きつい感じがして情が薄いというか、アッサリとして見える。「こちの人が好いたのは」のくだりは、余裕のある調子でいい間だった。
義平次は橘三郎。三婦内では傘を取らないが、嫌ぁな感じを醸し出す。
長町裏は決まり決まりの型が美しい。「しもた〜」の言い方が、それまでのセリフと地続きで、今までより自然に聞こえた。
池の向こうが一段高くなっているのは歌舞伎座仕様?
愛之助の団七、菊之助の徳兵衛は去年の博多座以来で、歌六の三婦、米吉のお梶が初顔合わせ。住吉鳥居前では、団七を迎えに来る三婦とお梶が親子のようでほのぼのする。市松の秀乃介は歌昇の次男だそうで、小作りな顔立ちが愛らしい。愛之助の団七は安定感があり、力みなく自然に団七になっている。菊之助は2回目とあって、板についてきた。
床屋の客でりき彌。下剃りの三吉は巳之助で、スッキリとしていいアクセントになっている。
磯之丞の種之助は小柄なせいか子どもっぽく見え、莟玉の琴浦も傾城というには町娘の風情で、共に映らない。佐賀右衛門の松之助は歳を重ねて動きに鈍さもあるが、まだ上手い。
三婦内は歌六はすっきりと格好いい。鴈治郎の愛嬌のある三婦を見慣れていたので新鮮。昔悪だったというからには、こういう男前な感じが本来かもと思う。お辰は愛之助が二役。キリリとした化粧が吉弥のようで、それは悪くないのだが、きつい感じがして情が薄いというか、アッサリとして見える。「こちの人が好いたのは」のくだりは、余裕のある調子でいい間だった。
義平次は橘三郎。三婦内では傘を取らないが、嫌ぁな感じを醸し出す。
長町裏は決まり決まりの型が美しい。「しもた〜」の言い方が、それまでのセリフと地続きで、今までより自然に聞こえた。
池の向こうが一段高くなっているのは歌舞伎座仕様?
2024年4月20日土曜日
4月20日 マシュー・ボーンの「ロミオ+ジュリエット」
スクリーンに映し出された真っ赤な映像の振り落としから、ロミオとジュリエットが寝台に横たわる印象的なシーンで幕開き。ヴェローナ・インスティテュートという若者の矯正施設が舞台で、白いTシャツとパンツの制服を着せられ管理されている。抑制された行動を肘を曲げた揃いの動きで描出し、プロコフィエフの音楽が効果的に使われている。
仲間を庇い、看守ティボルトの虐待を受けるジュリエット。一方のロミオは、政治家の父母に疎まれ、施設に入れられる。
バルコニーの場面で恋に落ちた2人がもつれ合いながらキスをするのは圧巻というか、アクロバティックというか。時間的にもだいぶ長いし、転がったり、体勢を入れ替えたりしても離さないのはよっぽどなのねぇと思うなど。別れてから、男女別々の部屋でそれぞれ仲間たちと恋バナで盛り上がってキャッキャしているシーンが微笑ましい。
酔ったティボルトがマキューシオを殺すのは原作通りだけど、ティボルトが殺されるところはロミオとジュリエットの2人ががりでベルトでくをを締めているように見えた。なのに、捕まって拘束服を着せられるのはなぜかロミオだけ。ロミオはいったん施設を追い出されるも、親の金の力で再び戻り、ジュリエットとの再会を喜んだのも束の間。ティボルトの幻影が現れたあたりから、「衝撃のラスト」は分かってしまった。怯えるジュリエットが誤ってロミオを刺してしまい、絶望して自ら胸を刺す。マキューシオの遺体?を間に左右に横たわり、互いに手を伸ばす構図は美しいけど、重なって倒れる方が自然では。
パリス・フィッツパトリックのロミオとモニーク・ジョナスのジュリエット。モニークは表現が硬い感じがして、共感しにくかった。
全てのキャストに名前がついていて、それぞれの物語が描かれるので、1度みただければ理解しきれない感じ。絶賛とまでは行かないけど、、もう一度見たくはある。
チケットの売れ行きが悪いと聞いていたけれど、1階席は8〜9割ほどか。後方サイドに空席が目立った。
2024年4月13日土曜日
4月7日 OSK日本歌劇団「レビュー 春のおどり」
第一部の「春楊桜錦絵」は山村友五郎構成・演出の和物ショーだが、こんなにつまらないと思ったのは初めて。
チョンパからの総踊りは華やかだけど新味はなく、客席降りを多用するのはあざとく感じる。途中の筍を巡るコントは友五郎らしくも退屈。翼和樹の無駄遣い。
チョンパからの総踊りは華やかだけど新味はなく、客席降りを多用するのはあざとく感じる。途中の筍を巡るコントは友五郎らしくも退屈。翼和樹の無駄遣い。
退団する楊琳と舞美りらが組んで踊るところが多いのはファンサービス。最後の楊のソロは「泣かないで」という歌詞で、さよならを湿っぽくしない。楊はソロで歌うところが多かったけれど、上手くなった。
第二部の「BAILA BAILA BAILA」は荻田浩一演出が楽しい。のっけからラテンのダンス2連発で盛り上げ、長髪の桐生麻耶の色気がダダ漏れ。ブギウギにちなんだコーナーもあり、「ハッピーブギ」やら「買い物ブギ」やらヒット曲も盛りだくさん。ただ、「ジャングル・ブギ」のところで虎柄の衣装(しかも鬼のパンツみたいなオレンジ地)はいかに。「私は雌豹」と歌っているのだから豹柄であってほしい。USKの舞台の再現シーンもあり、朝ドラでOSKを知った人にも楽しい構成。朝ドラの舞台演出を荻田が手掛けていたからこそ実現したのだろう。
第二部の「BAILA BAILA BAILA」は荻田浩一演出が楽しい。のっけからラテンのダンス2連発で盛り上げ、長髪の桐生麻耶の色気がダダ漏れ。ブギウギにちなんだコーナーもあり、「ハッピーブギ」やら「買い物ブギ」やらヒット曲も盛りだくさん。ただ、「ジャングル・ブギ」のところで虎柄の衣装(しかも鬼のパンツみたいなオレンジ地)はいかに。「私は雌豹」と歌っているのだから豹柄であってほしい。USKの舞台の再現シーンもあり、朝ドラでOSKを知った人にも楽しい構成。朝ドラの舞台演出を荻田が手掛けていたからこそ実現したのだろう。
ロケットはUSKのシーンでも少しあり、これで終わり?と思っていたら、ちゃんと別にもあった。スピード感があり、これぞOSK。
2024年4月12日金曜日
4月12日 文楽公演 第3部
「御所桜堀川夜討」
弁慶上使の段の中を睦・勝平。切を錣・宗助。
悪くはないがあまり印象に残らないのは、話が好みではないからだろう。中盤はつい意識が飛んでしまった。錣の熱演に拍手が起こっていたけれど。
人形は和生のおわさに情がある。瀕死の信夫を抱えたところなど、視線で語るよう。玉志の弁慶は少し地味か。玉誉の信夫、簑悠の卿の君、簑一郎の花の井、文昇の侍従太郎。
作品紹介などで、弁慶の生涯ただ一度の恋とか書かれてるけど、これは恋なのか?
「増補大江山」
戻り橋の段を織の若葉、靖の綱、咲寿の右源太、薫の左源太に燕三、団吾、清丈、錦吾、清方。錦吾、清方は八雲も。
中之島文楽のときも思ったけれど、織の若菜はあまり美人な感じがしない。厚化粧な感じとでも言おうか、自分は美しいと思って自惚れてる感じはある。薫は首を傾げて語るのはふざけているみたいに見える。
人形は一輔の若葉がスモークの中せりから登場し、滑るような動きで人ならぬものの怪しさを描出。舞も美しい。最後は雲の幕に乗ってせり上がる。渡辺綱は玉助、右源太の玉誉、左源太の簑太郎。
2024年4月7日日曜日
4月7日 文楽公演 第1部
「絵本太功記」
二条城配膳の段は掛け合いで、津国の春長、睦の光秀、碩の蘭丸、亘の十次郎、浪花中納言の文字栄に清友。
睦は太い声で堂々とした語りが武将らしい。津国は春長ならばもう少し位取りが欲しい。清友は的確。 ここから始まると物語が分かりやすい。
千本通光英館の段は小住・藤蔵。
小住の語りに貫禄が増している。
夕顔棚は三輪・団七。
女3人の語り分けもきっちり。
尼崎の前は呂勢・清治。
艶のある語り。伸びやかなフシに聞き惚れる。清治はタブレットは見ていないようだったけど、音に精彩がないというか、先が鈍ったというか。ミスタッチ?というようなところも。
後は急病で休演の千歳に代わって靖・富助。
靖の力いっぱいの語りがあっぱれ。語り出して10分で汗だくなのは大役に全力で臨んだからこそ。十次郎の「涼やかなりし」で拍手があったし、「現れいでたら武智光秀」は声量といい迫力といい十分で、大きな拍手。十段目はこうでなくては。後半の瀕死のさつきや十次郎にはもう少し情感が欲しいが、急な代役でここまで望むのは酷だろう。
二条城配膳の段は掛け合いで、津国の春長、睦の光秀、碩の蘭丸、亘の十次郎、浪花中納言の文字栄に清友。
睦は太い声で堂々とした語りが武将らしい。津国は春長ならばもう少し位取りが欲しい。清友は的確。 ここから始まると物語が分かりやすい。
千本通光英館の段は小住・藤蔵。
小住の語りに貫禄が増している。
夕顔棚は三輪・団七。
女3人の語り分けもきっちり。
尼崎の前は呂勢・清治。
艶のある語り。伸びやかなフシに聞き惚れる。清治はタブレットは見ていないようだったけど、音に精彩がないというか、先が鈍ったというか。ミスタッチ?というようなところも。
後は急病で休演の千歳に代わって靖・富助。
靖の力いっぱいの語りがあっぱれ。語り出して10分で汗だくなのは大役に全力で臨んだからこそ。十次郎の「涼やかなりし」で拍手があったし、「現れいでたら武智光秀」は声量といい迫力といい十分で、大きな拍手。十段目はこうでなくては。後半の瀕死のさつきや十次郎にはもう少し情感が欲しいが、急な代役でここまで望むのは酷だろう。
2024年4月6日土曜日
4月6日 文楽公演 第2部
「団子売」
藤、靖、咲寿、織栄に清志郎、寛太郎、清允、藤之亮。
藤はのっけから声が掠れている。清志郎は緊張感のある演奏。
人形は玉佳と一輔。手足の先まで行き届いた所作が滑らか。
口上は前列に新・若太夫を中心に、呂勢、錣、若、団七、勘十郎、千歳が並び、後列は弟子6人が控える。弟子たちはあまり緊張感のない感じ? 呂勢の進行で、笑いを交えた挨拶。
「和田合戦女舞鶴」
市若初陣の段の端場を希・清公。
藤、靖、咲寿、織栄に清志郎、寛太郎、清允、藤之亮。
藤はのっけから声が掠れている。清志郎は緊張感のある演奏。
人形は玉佳と一輔。手足の先まで行き届いた所作が滑らか。
口上は前列に新・若太夫を中心に、呂勢、錣、若、団七、勘十郎、千歳が並び、後列は弟子6人が控える。弟子たちはあまり緊張感のない感じ? 呂勢の進行で、笑いを交えた挨拶。
「和田合戦女舞鶴」
市若初陣の段の端場を希・清公。
あまり緊張した様子もなく。
襲名披露披露演目を、若・清介。
襲名披露披露演目を、若・清介。
盆が回って大向こうがかかるが、バラバラとして間が悪い。
素浄瑠璃で手がけるなど、前々から準備していただけあって、計算された運び。8割ほど埋まった客席も暖かく、盛り上がるべきところは盛り上がった。板額のクドキやら、市若の健気さやら、泣かせどころは声も出ていて少し心が揺さぶられたが、素直に泣けなかったのは、物語の理不尽さがひっかたから。板額の一人芝居とか、訳わからん。父親の浅利与市は屋敷の外で中が見えないくらい高い塀に隔てられているのに、なぜが中の様子を具に把握しているし、政子尼や綱手と板額の会話が外まで聞こえるくらい大声だったのなら、障子を隔てただけの隣室にいた市若に聞かれていなかったのは変だ。
人形は勘十郎の板額が大奮闘。だが、女武者というのが見える場面がないので、人物像がぼやける。紋臣休演により綱手は玉誉が代役。
「釣女」
芳穂、小住、聖、南都に錦糸、清馗、友之助、燕二郎。
歌舞伎や狂言と比べて掛け合いの面白さが物足りない。間の問題なのか。
人形は清五郎に代わって蓑一郎の大名、美女は紋秀に代わって紋吉。
素浄瑠璃で手がけるなど、前々から準備していただけあって、計算された運び。8割ほど埋まった客席も暖かく、盛り上がるべきところは盛り上がった。板額のクドキやら、市若の健気さやら、泣かせどころは声も出ていて少し心が揺さぶられたが、素直に泣けなかったのは、物語の理不尽さがひっかたから。板額の一人芝居とか、訳わからん。父親の浅利与市は屋敷の外で中が見えないくらい高い塀に隔てられているのに、なぜが中の様子を具に把握しているし、政子尼や綱手と板額の会話が外まで聞こえるくらい大声だったのなら、障子を隔てただけの隣室にいた市若に聞かれていなかったのは変だ。
人形は勘十郎の板額が大奮闘。だが、女武者というのが見える場面がないので、人物像がぼやける。紋臣休演により綱手は玉誉が代役。
「釣女」
芳穂、小住、聖、南都に錦糸、清馗、友之助、燕二郎。
歌舞伎や狂言と比べて掛け合いの面白さが物足りない。間の問題なのか。
人形は清五郎に代わって蓑一郎の大名、美女は紋秀に代わって紋吉。
23日に再見。客席の入りは半分ほどと振るわない。
新若は力の抜けた語りが一層進化。「ほんぼんの」の件では三味線が盛り上げた感じだった。
釣女の美女が簑紫郎。
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