2025年11月30日日曜日

11月30日 松岡玲子バレエ団「白鳥の湖」

小野絢子・奥村康祐ペア観たさに名古屋まで遠征。奥村の王子がキラキラしていて、小野はオデットのみだが、叙情的で手足が語る。2幕の出会いの場面は、警戒するオデットに王子が少しずつ近づいていくのだと思っていたが、結構早い段階でも見つめ合って気持ちを通わせていたのは、互いに一目惚れという演出なのか? これはこれで胸キュンだった。
バレエ団のレベルに合わせて、振付はかなり簡素化されていた。白鳥たちが立っているポーズが膝をつけて後ろ足を曲げていたのは何か理由があるのだろうか? 鳥の脚のように見えなくもないが、あまり美しくないと思った。
オケの演奏も独特で、金管の音が外れるのはともかく、テンポが揺れて違和感があった。あと、4幕で聴きなれない曲で白鳥たちの群舞や、オデットと王子のパドドゥがあったが、緊張感が薄い曲調で、何のために挿入したのか不明。
オディールはバレエ団の御沓紗也。パドドゥでポワントが落ちる場面もあったが、グランフェッテはダブルを入れるなどテクニックはそれなり。ただ、オデットとオディールを別のダンサーにすると、王子が騙されるのがよっぽど馬鹿みたいに見える。4幕は黒鳥が入り、ラストはハッピーエンドバージョン。ロットバルトを倒してめでたしなのは、茶番な感じで好みでない。

2025年11月29日土曜日

11月29日 大槻能楽堂企画公演 元雅の名曲二選

「武悪」

やはり和泉流は苦手だ…。シテの野村万作は主人役で、肝心の武悪を深田博治という配役も影響したか、後半の面白くなるところの前に意識が途切れ、気がついたのは終演直前だった。

「隅田川」

大槻文蔵のシテ。物狂いのところは淡々としているが、目が宙を彷徨っている感じが気が触れている様を表す。最後、作り物から子どもの声がすると一気に感情が揺さぶられた。世阿弥と元政の間で子役を出すか否かで論争があったそうだが、この日の公演を見る限り、出すべきと思う。(だが、歌舞伎は出さなくて問題ないのはなぜだろう) ワキの渡し守は宝生欣哉。ワキツレは宝生尚哉に代わり宝生朝哉。旅人役はアイになりそうなところ、ワキツレが演じるのは滑稽みを排したいからか。。
文蔵は足が悪いのか、船から立ち上がるところでワキが後ろから支えたり、塚の前で跪いた姿勢から立ち上がるときに後見がサポートしたりしていたのが心配。長く座るところで、尻引きも使っていた。
子方は井上正晴。セリフに詰まったり、声が上擦ったりしたところもあったが、涙を誘われた。失敗したと思ってないといいのだけと。

2025年11月22日土曜日

11月22日 大槻能楽堂企画公演 元雅の名曲二選

狂言「泣尼」 尼をシテとする演出で、病気休演の七五三に代わってあきら。逸平の何某、千五郎の僧。 あきらの尼は足元が覚束ない感じで登場し、口調は飄々としている。あらすじには「最初聞き入っていましたが」とあるが、説法が始まるなりうとうとしていたような。千五郎の僧は押し出しが強い。逸平は軽やか。 「弱法師」 友枝昭世の俊徳丸が若々しい。杖をついて、不確かな足取りながら、歳をとって見えないのが不思議。「天王寺の石の鳥居」のところでシテ柱をパシッと打つところでハッとする。心眼で夕日を観て舞う姿から歓喜が押し寄せ、人に突き当たってよろけてひれ伏す姿が哀れ。よくわからないがすごいものを見たと感じた。 宝生常三のワキ、茂のアイ。恥ずかしさのあまり立ち去ろうとする俊徳丸を通俊が引き止め、共に高安に帰るのだが、直接触れたり、手を取るでなく、アイがシテの後ろを支えるようにして橋がかりを去っていく。最後、舞台に残ったワキが留拍子?を打つのはこの能の特徴か。茂は声に重みがあり、位の高い役人という感じがした。 事前のトークで、「異流競演」と言っていたが、地謡は喜多流? シンプルに感じた。

2025年11月13日木曜日

11月12日 地主薫バレエ団「くるみ割り人形」

定番のくるみと侮っていた自分に恥いる気持ち。素晴らしく、1幕の終わり、雪のワルツの後で幕が降りると客席からどよめきが上がった。
筋立てから手を入れていて、ネズミの王様によってくるみ割り人形に変えられたお菓子の国の王子をドロッセルマイヤーとクララが助けるという展開。難度の高い振付が随所に散りばめられていて、主要な役だけでなく、冒頭の子どもたちやねずみ王の手下のねずみたち、雪のワルツ、花のワルツ群舞も見応えがあった。 山本隆之演じるドロッセルマイヤーの重要度が増していて、幕あきから終幕までクララをサポートする。クララとのパドドゥなど踊りでも魅せたが、子どもたちの前で披露する手品が鮮やか。クララ役の奥村唯は少女の純真さに嫌味がなく、瑞々しい。友人たちとの群舞を率いて踊ったり、ドロセルマイヤー、王子とのパドトロワ?など踊りの見せ場もたっぷり。くるみ割り人形の奥村康祐はカクカクした人形振りながら、よく踊り、ネズミの王様・福岡雄大とのバトルはテクニックの競演で迫力がある。王子の姿に戻ってからは、チャーミングなプリンスぶりで、しなやかな跳躍、回転技からはキラキラと光が溢れるよう。ネズミの王様の福岡は力強くキレのある踊りで王の風格。戦いの前、腹筋したり、スクワットしたりして準備に余念がないのも面白い。 特に素晴らしかったのは、金平糖の精(山崎優子)とお菓子の国の王(李帝字)のグランパドドゥで、高身長の李と品のある山崎のコンビネーションがよく、高難度のリフトを次々と繰り出しつつも息を呑むほどの美しさだった。 ディヴェルテスマンはお菓子の踊りになっていて、王子を救ってくれたクララとドロッセルマイヤーをもてなす趣向に。チョコレート、コーヒー、砂糖菓子などが2人の前にに供され、踊りを見ながら口にするという流れは物語としても自然だと思った。スペインがチョコレート、アラブがコーヒー、中国はお茶、ロシアはロシアンクッキーだったか。お茶の精は佐々木嶺と巽誠太郎。コミカルな動きながら高い跳躍などテクニックも高く、面白かったが、辮髪のカツラはちょっと違和感があった。

2025年11月3日月曜日

11月3日 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部

「當年祝春駒」 17分の短い一幕。顔見世なので曽我ものは必須なのか。 万太郎の五郎はきっぱり。橋之助の十郎はやわらかみというより、女方みたいに見えた。 玉太郎の化粧坂少将、米吉の大磯の虎、虎之助の朝比奈、歌六の工藤。 「歌舞伎絶対続魂 幕を閉めるな」 三谷かぶきと銘打ち、三谷幸喜の「ショー・マスト・ゴー・オン」を歌舞伎化。 伊勢の歌舞伎小屋を舞台に、「義経千本桜」を上演中の一座の舞台裏で次から次へと騒動が起こり、冒頭から笑いっぱなしの2時間。 狂言作者冬五郎役の幸四郎はコメディに振り切った芝居で、どこか西村雅彦みがあるなと思ったら、初演時にこの役を演じていた。座元藤川平蔵の愛之助、看板役者山本小平次の獅童と、三谷芝居に慣れた3人が笑いをリードする。 親方?役の鴈治郎もいい味。立女方?の竹島いせ菊が弥十郎で、静御前を演じるというので楽しみにしていたのだが、顎が外れそうになっているというちょっとふざけた設定で、ちゃんとした女方の芝居が見られなかったのが残念。莟玉が若手女方で、顎が外れて出られなくなったいせ菊の代役で静になるのだが、大チャンスにニンマリするなんて歌舞伎では見られない。静役は本職らしくしっかり。 染五郎は狂言作者見習いと義経役の役者の2役。見習いの方は頼りない三枚目風の拵えなのはいいとして、義経の扮装をしてもそれを引きずっていたように見えた。白鴎は大物役者役でセリで登場。セリフはすこしぎこちなかったか。最後に声だけ聞こえるのは録音? 千太郎が附け打ちの役で抜擢(チラシにも名前が出ていた!)。千寿も腰元の1人として出演していたが、セリフはなかった。

11月3日 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部

「御摂勧進帳」

巳之助の弁慶が立派。終盤の芋洗いのところは馬鹿馬鹿しさに気が緩みそうなところ、堂々として大歌舞伎の格を保っていたのが好もしい。新悟の義経、笠を被って俯いて座る姿勢も凛として手先まで神経が行き届いている感じがした。

「道行雪故郷」

清元による梅川忠兵衛。雀右衛門の梅川は幸薄い感じが良き。忠兵衛の扇雀も悪くない、というか、この人は立役のほうが似合うと思う。孫右衛門は出て来ず、通りがかった万才(錦之助)が一差し舞うのははなむけか。

「鳥獣戯画絵巻」

鳥獣戯画を題材に、猿や蛙、狐や兎が戯れる楽しい舞踊。新作かと思いきや、河竹黙阿弥作で、振付の二世藤間勘斎とは二世松緑だった。
猿(巳之助、虎之介)と蛙(橋之助)相撲をとると、何故か猿が二連敗。腹いせにか、猿僧正(松緑)が弓矢で蛙の親玉夫婦(芝翫・萬寿)を射殺すという謎展開は??だが、振付は動物の特徴を捉えて面白く、大勢出てくるので華やか。
しかし、同じ役で並んで踊ると踊りの良し悪しがよく分かる。女狐の時蔵、新悟、米吉、左近が並ぶと、米吉がちょっと浮いて見えるのは何が違うのか。
作者の鳥羽僧正の菊五郎が冒頭と最後に出て来たのも嬉しい。

「御所五郎蔵」

愛之助の五郎蔵に松緑の土右衛門が好配役。何度も勤めている愛之助の五郎蔵は危なげなく格好いいし、松緑の土右衛門はセリフの癖が抑えられ、いい憎まれ役。傾城皐月の時蔵は古風な美人で、五郎蔵のために心ならずも愛想尽かしする苦悩をよく描く。逢州の米吉は綺麗だが、もう少し風格が欲しいか。
五郎蔵の子分に一際小柄で子どもみたいなのがいると思ったら左近。(愛三郎よりも小さい)ただ、姿勢が良く、キリッとしているので見劣りはしなかった。セリフも太い声でしっかり。むしろ隣の染五郎が猫背気味で格好悪かった。
復讐に燃える五郎蔵が、皐月と誤って逢州を殺してしまうのは何度見ても理不尽だし、壁から出て来た土右衛門と闘い出したところで幕切れなのはモヤモヤする。

2025年11月2日日曜日

11月2日 ロミオとジュリエット

キミホ・ハルバート振付はコンテよりのロミジュリ。冒頭、プロローグ的にキャピュレット家の様子や  恋するも振られるロミオが描かれ、本編は死屍累々の如く横たわる群衆からのスタートが不穏な空気を醸す。
休憩を含め2時間ほどなのでストーリーはサクサク進むも、要所要所はしっかり描く感じ。一目惚れのシーンは、踊るジュリエットな目を奪われ、見つめ続けるロミオの視線がジュリエットの気を引く。視線だけで芝居をしてしまう奥村康祐の役者ぶりよ…。バルコニーのパドドゥや寝室のパドドゥはやや短めながら、幸福感にあふれ美しい。駆け寄ったジュリエットが背中からロミオの肩にのるリフトが素敵だった。一番印象的なのは、秘密結婚式で、長いヴェールの端をロミオが手にして、ふわりと浮かせた下をジュリエットが駆け寄るとそのまま花嫁のヴェールになる演出。墓場のシーンはジュリエットの亡骸を抱いたロミオが毒を煽った後、短いパドドゥがあったのだが、これはどういう意味なのだろう?瀕死の状態で愛を交わしたのか、それともジュリエットの妄想か。
奥村康祐のロミオはこれぞというロミオだが、もうちょっと少年ぽさがあってもよかったかも。芝居の手振りばかりだったのも気になった。今ひとつ、物語に入り込めなかったのは、時間が短かったのと、マキューシオ殺害の描かれ方に違和感があったから。ティボルトとの諍いの早い段階で胸を刺されたのに、その後も長い時間闘いを続けるので、十分止める時間があったのにロミオが放置していたように見え、マキューシオが殺されて逆上するのが不自然に思えた。 キホミはジュリエットには歳がいきすぎているかと思ったが、小柄なのと初々しい演技で違和感はなかった。ティボルトの吉崎裕哉はシャープな踊り。細身の身体つきのせいか爬虫類を思わせ、危険な感じがする。マキューシオの上野天志は振付も兼ねる。ロミオ、ベンヴォーリオの菊地研とともに、男性ダンサーの躍動感のある踊りが楽しかった。
アートダンスカナガワの主催なので、子どもたちや、アマチュアダンサーが多数出演して、アンサンブルが厚く、情景描写として面白かった。ロミオが追放され、パリスとの結婚を強いられたジュリエットが神父に助けを求めに行くところで、波のようなアンサンブルがジュリエットを巻き込んで神父のもとへ連れて行ったり。両家の争いを仲良く遊んでいた子どもたちを引き裂くことで表すなど、制約のある中で工夫されていた。