御殿は菊之助の政岡は期待通り。大名家の乳母としての品格と情愛があり、凛とした美しさに緋色の着物が映える。丑之助の千松はただの子役に止まらない達者ぶりに舌を巻いた。古典の子役なのであまり個性は出せないと思っていたのだが、なかなかどうして。「お腹が空いてもひもじゅうない」のセリフは前半を弱々しく、ゆっくりと、「ひもじゅうない」をはっきり発声することで、弱っていながら強がっていることがまざまざと感じられた。飯炊きを待っている間に雀の歌を歌うところでは袖で顔を覆って泣きじゃくるなど、これまで見落としていたところに目が行って、退屈する暇がないほど。目を細める癖も見られなかった。鶴千代は種太郎。十分いいのだが、丑之助のように特筆することはなし。歌六の八汐は意外に凡庸。お家のっとりを図る大きさがなく、意地悪なおばちゃんみたい。栄御前に雀右衛門、沖の井に米吉、松島に芝のぶ。
床下は右團次の男之助、團十郎の弾正。少し痩せたのか、顔が幸四郎に似て見えた。
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