2023年10月27日金曜日

10月27日 kyoto de petit 能

お囃子ユニットの解説が新鮮。笛は唯一のメロディ楽器なので打楽器に負けないように力強く、大鼓はただただ強く、太鼓方は両手を使今華やかに、小鼓は多彩な音色と特徴が簡潔に分かりやすい。前半座っているだけという太鼓に、小鼓や大鼓からツッコミが入るのも面白い。

「紅葉狩」
林宗一郎のシテ。
4人のワキを引き連れて華やか。ワキ2人づつが舞った後、シテが舞うのだが、優雅な調子から途中から曲調が急変して激しい舞に。長袴をバッサバッサと捌いて立ち回る。
鬼の正体を表して立ち回りになるのだが、がっぷり四つ?に組み合うのに驚く。最後はトドメを刺されてがっぱと伏せるのだが、直後にすっくと立ち上がってワキと共に退場するのがシュールだ。

2023年10月22日日曜日

10月22日 東京バレエ団「かぐや姫」

金森穣振付の新作バレエがついに全幕上演。2年前の1幕だけの時より、衣装や舞台装置が洗練された感じ。

キャラクターごとにテーマカラーがあり、かぐや姫は白(パール)とマリンブルー、農村の人々は茶系、帝は金と黒、大臣は燻銀、影姫は赤と黒といった感じで、色彩が鮮やか。白を基調とした舞台装置にも映える。
かぐや姫や影姫らはレース調の幾何学模様の入ったボディスーツで、振袖のローブを纏うのが動きにつれてはためくのが美しい。男性キャラは裾窄みのパンツで、ポケットの辺りにドレープがあり、回転すると羽のように広がる。

かぐや姫の秋山瑛は小柄で華奢なのでいたいけな子供のよう。難易度の高いリフトに軽々と振り回される様はこの世ならざる者の感じも。沖香菜子演じる影姫はかぐや姫と対になるキャラクターだが、パンフレットにあった「妖艶な」という形容詞はどうなのだろう。誰かを誘惑するわけではなく、高貴で孤高な女性というふうに見えた。
男性は道児の柄本弾がシンプルな衣装に体格の良さが映える一方、帝役の大塚卓は柄本より頭半分くらい背が低い上に細身なので、威厳が足りない気がした。冠くらい付けた方が説得力があるのでは。

ドビュッシーの音楽に乗せたパドドゥはうっとりするし、大人数の群舞には迫力があり、踊りの見応えは十分。 かぐや姫が宮廷に召される経緯が不明だったり(どこかで見初められた?)、帝の元にいながら大臣たちに求婚されたりと、ストーリー上しっくりこないところもあったが、全体として儚く美しい作品だった。

2023年10月21日土曜日

10月21日 歌舞伎公演「妹背山婦女庭訓 第二部」

布留の社頭の場 道行恋緒環

梅枝演じる求女のクズっぷりが秀逸。浮世離れしていて、恋の鞘当てを繰り広げる女たちには冷たく、他所ごとのよう。両側から引っ張られ、ウンザリした表情すら見せる。米吉の橘姫は可憐で健気な赤姫を好演。おっとりとしていながら、お三輪とのバトルでは一歩も引かない強さも見せる。対して菊之助のお三輪は期待外れだった。妙に老けて見え、健気さや一途さが薄いので、ヒロインを応援する気持ちになれず。緒環が切れたところもあっさりしていて、思い入れが弱いと感じた。 

浄瑠璃は葵太夫以下4枚4挺の豪華版。


三笠山御殿の場

入鹿を取り巻く官女に芝のぶやりき弥、折乃助、いびりやくの方の官女には千次郎の姿も。

お三輪は相変わらずで、田舎娘が御殿に迷い込んだ心細さや恋しい男を希求する様子が薄く、官女たちにいびられてもあまり可哀想でない。時蔵の豆腐買いはご馳走?なのか。普通の女中のような拵えで、おかしみはあまりなかった。文楽だとお福の首だから、はっきり笑いの場面なのだが。芝翫の鱶七は、豪放な感じが役柄に合うが、セリフが少し聞きづらい。


大詰めの三笠山奥殿の場、入鹿誅伐の場

藤原鎌足をはじめ、藤原方が勢揃いして入鹿を伐つ。大団円の華やかさ。装束を改めた梅枝が凛々しい貴公子振り。菊之助は采女の局での登場だが、こちらも年増な感じがした。鎌足は休演の菊五郎に変わって時蔵。髭をたたえた立役姿は珍しい。 最後は役者が一列に並び、国立劇場に別れを告げるセリフも。

2023年10月14日土曜日

10月14日 清流劇場「台所のエレクトラ」

 エウリピデスの「エレクトラ」を翻案。舞台は貧しいアパートの食卓。普段着のような衣装、大阪弁で演じることで、松竹新喜劇のような雰囲気に。エレクトラ役の中迎由貴子は喜劇女優のような親しみやすさ。偽装結婚している人足の上海太郎、近所のおかみさんの峯素子らとのやりとりもほのぼのしており、オレステス(勝又諒平)、ピュラデス(福永樹)の登場もコメディっぽいのだが、王妃クリュタイメストラを呼び出したところから急に様相が変わる。王妃役の八田麻住は光り物をふんだんにあしらった衣装が大阪のおばちゃんみたいで、ベタな大阪弁で強弁を振るう王妃とエレクトラとの母娘対決に緊迫感が高まる。違いに相手に毒を盛ろうとしていると思わせておいて、実は毒を盛っていたのは娘だけだったという結末。エレクトラが偽装結婚していた人足とが本当の夫婦になる未来を匂わせて幕。

原作との改変点は、人足には別に昔から付き合っている恋人がいるとしたことや、エレクトラがピュラデスと結ばれて貴族社会に戻るのではなく、人足と貧民窟に残るなど。アフタートークは田中孝弥の司会で演出家の西沢栄治と大阪市立大名誉教授の丹下和彦。丹下はエレクトラが母殺しをするところに飛躍があるので、ここを変えて欲しかったと。

2023年10月13日金曜日

10月13日 中之島文楽2023

ガブを使った2演目を現代美術家の後藤靖香によるプロジェクションマッピング、旭堂南海の講談と。

第一部は「日高川入相花王」 渡し場の段

旭堂南海が物語の前段を語り、文楽へ。プロジェクションマッピングが紙芝居のようで、登場人物が分かりやすい。ただ、映像を使うと会場が暗くなるのは歓迎しない。清姫は京見物のおりに見初めた桜木親王に熊野で再会して恋心が再燃したところへ、父親から許嫁だと聞かされてすっかりその気に。ところが、親王には別に許嫁・おだ巻姫がおり、ともに道成寺へ逃げてしまう。嫉妬に駆られた清姫は…というところで文楽の渡し場の段につながるのだが、なんで父親は誤解を解いてやらないのかと思う。

床は織、碩、織栄に燕三、友之助、燕二郎。
清姫の第一声で、なんか違うと思ってしまう。好みじゃないのだろうが、可憐でない。一目惚れした男を思い続ける一途さに共感できないと、ただのストーカーだよなぁ。本公演以外は初めてという織栄はソロパートをしっかり。三味線隊は派手な手が耳に楽しい。

人形は紋臣の清姫。黒地の振袖は柄が小さめで、舞台映えしない。蛇体になってからは振り回すのに精一杯という感じ。玉佳の船頭は安定感。 
プロジェクションマッピングの背景は、太い線で描いた波がダイナミック。だが、映像を使うと人形に影ができてしまうので、人形が霞んでしまうと思うのだが。

第二部は「増補大江山」戻り橋の段

織の若菜、碩の渡辺綱に燕三、団吾、友之助、燕二郎。友之助、燕二郎は八雲も。

人形は一輔の若菜が前半、しっとりと美しく。扇を使った舞も優美。一方、鬼の正体を表してからの綱の玉男との立ち回りは迫力があった。
カーテンコールで、若菜の左に紋臣が入っていたのがわかりびっくり。大活躍だ。
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2023年10月7日土曜日

10月7日 ミュージカル「スリル・ミー」

 尾上松也×廣瀬友祐ペアを観劇。

松也の私は粘着質というか、オタクっぽいのが私には合わず。歌うときのブレス音も気になった。彼の廣瀬は長身で体格がよく、登場時には場を制圧するような存在感に息を呑んだ。乾いた感じの歌声も悪くない。…のだが、松也との組み合わせかあまり魅力が持続せず。全体として、不完全燃焼感が残った。