2022年6月13日月曜日

6月12日 スペクタクルリーディング「バイオーム」

宝塚を退団した上田久美子の独立第1作をオンラインで視聴。

政治家一家を舞台に、人と屋敷の庭に生える草木の視点が交互に物語を紡ぐ。
8歳の息子ルイ(中村勘九郎)は実在しない庭師の娘ケイや、庭の木々と会話をするなど、発達障害のきらいがある。母親の玲子(花總まり)は情緒不安定で、息子との関係はぎこちなく、夫・学(成河)との関係もうまく行っていない。学は優秀な官僚だったのを見込まれて婿入りし、義父・克人(野添義弘)後継者として着実に歩を進めつつも、問題の多い妻や息子を持て余し、仕事に逃げている。
古参の家政婦ふき(麻実れい)やその息子で庭師の野口(古川雄大)、玲子が傾倒する花療法士ともえ(安藤聖)ら、癖のある登場人物ばかりで、濃厚なセリフのやり取りは重苦しいほど。

キャスト表の筆頭はルイだが、むしろ玲子の物語としてみた。花總は夫や息子に素直に愛情を注げずに苦しむ様を熱演し、クライマックスで原因は出生の秘密があることが明かされ、実の母であるふきとの壮絶なやりとりには息を呑んだ。
麻美は、いわくありげな家政婦と、庭の母木である黒松の双方で存在感を発揮。野口は玲子の幼馴染で、身分違いの憧れを抱いているという役どころ。古川と花總が演じると、別作品での共演の記憶が重なって、前世の縁があるように見える。

ラスト近く、二役で黒松の芽を演じた花總と、ルイが共に幕の向こうへ去るのは、母子ではないのだけど、この親子の関係に少し救いを感じさせた。 

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