2016年4月23日土曜日

0405 真紅組「おしてるや」

道頓堀掘削にかかわる人々の群像劇。小劇場であれだけの人数を描くのは大したものだ。ほとんどセットもないなか、舞台の床を外して堀にする工夫。最後、舞台前方から後ろまで一本の筋ができると堀に見えてくる。 主人公である道頓の甥がウジウジした男で、観ていてイライラするのは狙いだろうが、物語の運びが遅い感じがしてじれったい。遊女歌舞伎の一座の踊りは長い割に完成度が低く辛い。しかもなんで曲が「君の瞳に恋してる」なのか。日本語の歌詞をつけていたようだが、違和感があった。

2016年4月21日木曜日

0420 劇団☆新感線「乱鶯」

いのうえ歌舞伎ブラックと銘打ち、いつもの新感線よりも大人な、ビターな作りだそう。ばかばかしいギャグは抑えめだった。 1幕は話の運びが冗長でダレたが、2幕はスピード感が増して楽しめた。 ただ、救いがない話だ。大東駿介演じる勝之助は人を疑うことをしらないせいか、思慮が浅く、計画が盗賊方に漏れて、結果お店の人たちも自身も惨殺されてしまう。十三郎(古田新太)が盗賊を皆殺しにして復讐を果たすが、最後、黒幕といざ対決というところで幕。カタルシスが足りず、もやもやした気分が残った。 立ち回りが冒頭とラストにあるのだが、むやみに血が飛ぶのが生理的に嫌なのと、あまり代り映えしない気がして、長く感じた。これが楽しみという観客も多いのだろうけど。 勝之介の大東が、むやみにやる気があるが、能力が伴わず空回りする役人を好演。稲森いずみの居酒屋のおかみも、ちゃきちゃきとした江戸の女房が気持ちよかった。古田は足を洗った元盗賊がはまるし、存在感はさすが。立ち回りの動きがやや重かったのは年齢のせいか。

2016年4月17日日曜日

0415 「魔術」

中山美穂の初舞台だそう。足首の細さに目を奪われた。 セリフの言い方や間の取り方でややぎこちなく感じるところもあったけれど、あの声で「魔術よ!」というのが印象的だった。澄んでいるのだけどちょっと舌足らずというか、コケティッシュというのか、中山美穂の声と話し方。天然なのか、夢見がちなのか、突拍子もないことを言い出す女という役どころには嵌っていたように思う。 話の筋は幻想と現実が入り混じる、摩訶不思議な空間に??を浮かべながら、けれど心地よい時間。萩原聖人の深刻ぶる男、勝村政信のひょうひょうとしたオッサン(ビールをこぼすのはほどほどにしてほしいかった)はさすがの上手さ。橋本淳の若い男が一人だけ陽でいいアクセントになっていた。

2016年4月10日日曜日

4月10日 歌舞伎女子大学「妹背山女庭訓に関する考察」

講義のタイトルのようだが、芝居仕立てで妹背山女庭訓の4段目を解説する。 憧れの女性の先輩の気を引くために先輩の好きな妹背山女庭訓について勉強するとう設定がしっくりこないと思って調べたら、初演時は彼氏に浮気されたOLが主人公で、お三輪に共感する話だったらしい。 惚れた男に浮気され、嫉妬に狂うお三輪。入鹿邸で官女らに虐められた挙句、突然現れた大男に刺され殺される理不尽さが理解できないという主人公に、蘇我入鹿vs藤原鎌足の壮大なバトルの中で死なざるを得なかったお三輪の切なさが鍵だと解説する先輩。面白く観たけれど、普通に4段目を観たら、お三輪がなんで殺されるかは分かるよなあ…と思った。ただの三角関係ならトレンディドラマや韓流ドラマだと一緒だけど、妹背山女庭訓はちょっと違うということを伝えたかったのはよく分かったけれど。

2016年4月3日日曜日

4月3日 文楽公演 第2部

「鹿殺しの段」 亘太夫と錦吾。簾内の短い段。鹿がかわいい。 「掛乞の段」 始太夫と龍爾。 始太夫は体つきのせいか立派な感じ。クールな龍爾との対比が面白い。 「万歳の段」 睦太夫と清馗。コミカルな場面でホッとする。睦太夫はちょっと硬いか。 「芝六忠義の段」 英太夫と宗助。 それなりに大事な場面のはずなのに、英太夫の語りが気の抜けたようで盛り上がらず。最初の口上で宗助の名前間違われるし。 「杉酒屋の談」 咲太夫の代役で咲甫太夫と燕三。 急な代役とは思えないくらい落ち着いた様子。お三輪は可憐でよろし。 人形は勘十郎が出てくると舞台が映える。橘姫の勘弥も求馬の清十郎もニンにあってる気がする。 「道行恋苧環」 お三輪の津駒太夫、求馬の咲甫太夫、橘姫の希太夫と咲寿太夫、小住太夫。三味線は寛治、清馗、寛太郎、燕二郎、清允。 華やかな道行。お三輪は津駒太夫より希太夫か咲甫太夫のほうがあっている気がする。 「鱶七上使の段」 文字久大夫と清志郎。 こういう時代物の語りは文字久太夫の得意とするところだが、今回は特に立派に感じた。入鹿の大笑いで客席から拍手が。前日の靖太夫と違って余裕があった。 「姫戻りの段」 芳穂太夫と清丈。 「金殿の段」 津駒太夫と団七。 最近、歌舞伎で見たばかりなので、比べると、お三輪の可憐さとか、官女の意地悪さとかがちょっと足りない気がした。 勘十郎のお三輪は可憐なのだけど、津駒太夫の官女が上品なので、対比がはっきりしなかったせいか。

4月2日 文楽公演 第1部

妹背山女庭訓の通し。国立文楽劇場の前の桜も満開でいい陽気だ。 「小松原の段」 久我之助に三輪太夫、雛鳥に南都太夫、小菊の靖太夫、桔梗の咲寿太夫、玄蕃の文字栄太夫、采女の亘太夫に三味線は喜一郎。 靖太夫の小菊がコミカルなかわいさがあってよかった。 「蝦夷子館の段」 口を小住太夫と清公、奥を松香太夫と清友。 小住太夫の声がすごく前に出ている。 「猿沢池の段」 津国太夫と団吾。 「太宰館の段」 靖太夫と錦糸。大笑いで顔を真っ赤に、血管が切れるんじゃないかという勢いで語ったのに、思わず客席から拍手が。 「背山妹山の段」 背山は千歳太夫の大判事に文字久太夫の久我之助、三味線は藤蔵と富助。 妹山は呂勢太夫の定高に咲甫太夫の雛鳥、三味線は清介と清治。 いやあ、すごかった。2時間近い長丁場で途中寝ちゃうという話も聞いていたのだが、興奮しっぱなし。特に、大判事と定高が出てからはもう。なにより両床の迫力というか、緊張感というか、心揺さぶられた。舞台も凄いし、床も凄くて、目がもう一つほしい気分。下手側の席だったせいか、妹山のほうに特に心が動かされた。心情的にも、まっすぐに忠義を訴える大判事に対して、本心を隠して入内を進める定高のほうが複雑な心情に気持ちが動かされるのかも。もう泣くしかないって感じ。

3月20日 うめだ文楽

トークは三浦しをん。期待していたのだが、司会の関テレアナウンサーが空回りしていてうっとおしい。ぽつりぽつりと挟む三浦のコメントが面白かっただけに、もっとちゃんと話を聞きたかった。 「傾城阿波鳴門」 小住大夫と寛太郎の若手コンビが奮闘。住大夫さんが観にいらしていて緊張したせいか、ちょっと硬い感じもあったけれど、全体として悪くはなかった。お鶴やお弓など高音域はちょっと聞き苦しかったかな。小住大夫は肩衣にまで汗がにじんでいて、驚いた。