2015年12月16日水曜日

燐光群「お召し列車」

五輪の観光客向けに、お召し列車を走らせる企画の選考会を舞台に、同じ名前で運行されていたハンセン病患者移送のための列車について知ることになる。いやらしくなく、歴史に隠されてきた事実を知らせる手法は鮮やか。

途中、福島原発に触れて、アンダーコントロールではない、と言ったり、JR東とその他の対立を揶揄したりと、演出家の思想かちらり。

元ハンセン病患者の渡辺美佐子の凜とした佇まいが素敵だった。

2015年12月12日土曜日

12月12日「十二月大歌舞伎」

「妹背山婦女庭訓」

「杉酒屋」と「道行恋苧環」は七之助が、「三笠山御殿」は玉三郎がお三輪。

七之助は橘姫の児太郎と並ぶと上手く見えたが、やはり玉三郎が出てくると舞台への惹きつけられ方がガラリと変わる。女官たちにいじめられるのはつくづく哀れだし、嫉妬に狂う様は力強く悲しい。観て非常に満足。

松也の求女は美男子だが、何を考えているのか分からん、薄情な感じも。

児太郎の女形は貧相というか、幸薄い感じがするのは何故だろう。

丁稚子太郎の団子はのびのびと楽しそう。
中車が初めての女形で豆腐買いおむら。意地悪婆さんのようで違和感はない。

2015年12月11日金曜日

能法劇団「No Where?能はどこへ」

「言葉なき行為1」

無言劇なのだが、茂山あきらの身体の雄弁なこと。顔の表情だけでなく、身体の動きから、感情の機微が伝わるのだ。深い絶望。
合図として、審判の吹くような笛が使われていたのは、音が強すぎて合わないように感じた。

「北の鏡」

美女のハイディ・S・ダーニングは藤間流の日本舞踊もするそうだが、コンテンポラリーダンサーの印象だった。死神役のミニマムな動きとの対比が面白かった。電子音楽と小鼓、笛の演奏は決して協調しないのだが、不思議なバランス。

「濯ぎ川」

恐妻と姑、2人にこき使われる英国人の夫とのやり取りが日本語と英語のチャンポンで演じられる。狂言のリズムが聴きやすく、素直に笑える。

「ロッカバイ」

繰り返される詩のような朗読と能のような動き。幻想的だがちょっと難解か。

劇団往来「夏のない年」

フランケンシュタイン誕生の舞台裏と、物語の中が交錯する。バイロン卿の要冷蔵は虫酸の走るようなら男を好演。事実上の主役は作者メアリーの瞳梨音で、長い独白を手堅くこなしてた。フランケン=名も無き者の桜花昇ぼるは存在感のある演技で惹きつけられた。

ウーマンリブ「7年ぶりの恋人」

宮藤官九郎の本領であろう公演を初めて見た。小学生でも笑えるであろうコントの数々。私はあまり笑わなかったが、横の席でゲラゲラ笑っている兄さんがいて、後で見たら星野源だった。80年代のアイドルソングのような主題歌がよくできていて、耳に残った。

劇団子供巨人「重力の光」

オープニングとエンディングがダンスで、やっている人たちが楽しそう。勢いがあるな〜という感じ。荒唐無稽な設定で、馬鹿馬鹿しい笑い。下ネタが好きじゃないのであまり笑えなかった。光役の益山寛司は素顔はすごい美形というわけではないのだが、女装してると可愛く見えるから不思議。

2015年12月6日日曜日

関西芸術座「慕情秋桜」

河東けいの演技の説得力がすごい。一言一言のセリフがリアリティを持っている。主役をはじめ、役者さんの演技が安定しているのは歴史ある劇団らしい。

脚本がしっかりしているせいか、演出の力か、東京→京都→舞鶴の移動や時空を超えて中国に場面が移るのも、違和感なく見られたし、内容もかなり詰め込んでいるのだけど、無理なく見られた。

燈座✖️虚空旅団「界境に踊る」

ヘイトスピーチを題材にしたものだが、ヘイトスピーチと人種差別を一緒くたにしているような気がして、違和感を拭えなかった。人種差別はホロコーストや虐殺の要因だけど、ヘイトスピーチは近年の現象ではないのか。「私たちは誰かを殺すの?」という衝撃的なセリフが唐突に感じた。問題意識を感じていることはひしひしと伝わってくるのだが、登場人物がどれも、論理展開が飛躍していて、共感できなかった。

主人公がレズビアンという設定なら、在日であることを隠して生きるコリアンにもっと共感できないのか。最後、主人公がいちばん辛い時に支えてあげず、去ってしまう在日の恋人が冷たくみえた。

中盤からのセリフの応酬は、内容には共感できないものの引き込まれた。役者さんがうまいのか、演出がいいのか。

2015年12月2日水曜日

吉例顔見世興行 夜の部

「信州川中島合戦 輝虎配膳」

勘助母越路の秀太郎が貫禄。妻お勝の時蔵も武家の妻らしい気丈さ。
梅玉の輝虎は、こういうワガママな殿様はお手の物というか。

「口上」

総勢17人だったのに、皆さん割とオーソドックスで、ちょっと巻いて終わった。

「土屋主税」

仁左衛門の大高源吾が格好いい。

亀鶴の其月はすごく嫌な奴なのだが、この人が嫌な奴でないと話が引き立たないからね。

「勧進帳」

海老蔵の弁慶に愛之助の富樫。

海老蔵はなりは立派だし声も悪くないのに、どこか気が抜けたようで緊張感に欠ける。どこか遠くを見る目。 弁慶と富樫のやり取りが最高潮に達するところで客席から笑いが起きるのはそのせいか。

吉例顔見世興行 昼の部

「碁盤太平記」

大石内蔵助に扇雀、主税に壱太郎。
岡兵実は高村逸平太の愛之助は悪役が似合う。かなりオイシイ役ではないか。
りくの孝太郎、母千寿の東蔵は手堅い。

「吉野山」

藤十郎の静御前に橋之助の忠信。
あのお年とは思えない舞ではあるが、動きがやや小ぶりで、声も小さいよう。橋之助が大きく動いてカバーしているようだった。

「河庄」

襲名の演目なのだが、治兵衛って情けなくてちっとも素敵じゃない。そのせいか、孫右衛門の梅玉がとても素敵に見えた。分別があって、大人で。
小春は時蔵。治兵衛への気持ちが残りつつも、おさんのために身を引く心情が切ない。

秀太郎のお庄はいるだけで上方の風情。

太兵衛の愛之助と善六の亀鶴の敵役コンビは息が合っていい。

「土蜘」

仁左衛門の土蜘は格好いい。膝が悪いのか、しゃがんだり立ち上がったりする動きがあるにキレがなかった。

南河内万歳一座「偽世物小屋」

ステージいっぱいにラック掛けの服がずらりと並んで、行列や雑踏を表す。時に、移動して電車になったり、デモの群衆になったり。服を掻き分けて、役者が出たり入ったり。
行列に並んで何かを待っているのだけど、それが何かは分からないのだ。何だかよくわからないまま話が進んでいく。言葉遊びをしているようでもある。
最後、「踊って終わりにするのは嫌だ」と言いながら、無理やり纏めてしまったような。