富姫に元宝塚男役の大空祐飛、亀姫に歌舞伎の中村梅丸、図書之助は現代劇の須賀貴匡。ほか、三上博史や狂言師の茂山逸平、能楽師の梅若六郎玄祥と、いろんなジャンルの役者の競演。どの役もぴたりとはまっていて、けど、異種格闘技のような緊張感がよかった。ただ、「新版」というほどの斬新さがあっただろうか。萬歳ハムレットや蜷川幸雄の舞台でも、古典芸能の役者がスパイスを利かせて効果をあげたという前があるのだし。
富姫の大空は、人ならぬものの妖しい美しさがあってよかった。威厳のある言葉遣いが、時に男っぽいというか、凛々しくて、こういったところは元男役の面目躍如なのか。きれいな声なのに、セリフが走ってしまって内容が聞き取れないところが所どころあったのが残念。
梅丸は相変わらずの可憐さ。元男役とはいえ、女優の隣に並んでもかわいく見えるって凄い。可愛いなりして無邪気でいながら、生首を土産に持ってくるような怪しさもあった。姉と慕う富姫と頬を寄せ合うシーンなんか、倒錯的でドキドキした。これからが楽しみな役者さんだ。
泉鏡花役の三上博史は悪くないのだが、この役必要かなあ?幻想的な世界への案内役みたいな位置づけだったのだけど、天守物語を見に来ている観客にこの手続きは不要では。
全体を通して、能楽師や狂言師の発声の素晴らしさを再認識した。ほかの役者陣とは明らかに違うもの。身のこなしも。この人たちのおかげで、舞台がピリッと締まった。
2014年4月23日水曜日
2014年4月22日火曜日
4月12日 スーパー歌舞伎Ⅱ「空ヲ刻ム者」
澤瀉屋の人たちは芸達者だなあ。特に、美形ぞろいの女形たちが。女盗賊の笑也はこれまでのイメージと違う、凛々しい役。発声のしかたが宝塚の男役っぽい感じもしたけれど、格好いい女傑を好演。
国崩しの悪役、長邦(門之助)の妻、時子を演じた春猿もいい悪女っぷり。最初は美しいお姫様のようで、長邦の妹かと思ったくらいだったけど、だんだんとしたたかになっていく様がいい。
笑三郎はいまいち良さが生かされていないような役で残念だったけど、これは脚本のせいね。
一方、主人公2人は…。悩める仏師、猿之助演じる十和が格好良くないし、全く共感できない。ぼさぼさヘアスタイルやゆで卵のようなメイクはどういう意図でああなったのだろうか。父親に反抗して、仏教にも批判的で、哲学っぽいセリフを口にするのだけど、人を殺したことへの反省や屈託が全くないので、うすっぺらく感じる。で、これまでにないような仏像を彫るのだけど、悟りを開いたわけではなく、単に前例を否定しただけ。そんな人が掘った仏像に力が宿るのに違和感がある。
もう一人の主人公一馬を演じる佐々木蔵之助。初めての歌舞伎で緊張していたのか、あまりの格好悪さにびっくりした。歌舞伎風の見得ができないのはしかたないにしても、時代劇で殺陣の経験はあるだろうに、刀を抜いたり構えたりする姿が何とも不格好。せっかく上背もあるし、歌舞伎のメイクも似合っていたのにもったいない。
現代劇から参加したほかの2人は浅野和之と福士誠治とも、歌舞伎のなかに入ることの違和感はなかった。特に浅野は女形(?)で狂言回しでもある役で存在感があった。一方、福士はあじゃがじをほうふつとさせる、ちょっと足りない弟分の役。こういうキャラクターにする必要性あるのかな。もっと格好いい役でもよかったのでは。
最後の立ち回りなどは派手でさすがスーパー歌舞伎の面目躍如。でも、戸板倒しの2枚同時にってあざとくないか。いろいろ見せ場もあって、飽きずにみられたのだけど、肝心のストーリーに共感できないので、感動がいまいちだったのが残念。あ、十和の師となる仏師、九龍を演じた右近が舞台を締めていたのはさすが。出番はそんなに長くなかったのだけど、存在感が凄い。
国崩しの悪役、長邦(門之助)の妻、時子を演じた春猿もいい悪女っぷり。最初は美しいお姫様のようで、長邦の妹かと思ったくらいだったけど、だんだんとしたたかになっていく様がいい。
笑三郎はいまいち良さが生かされていないような役で残念だったけど、これは脚本のせいね。
一方、主人公2人は…。悩める仏師、猿之助演じる十和が格好良くないし、全く共感できない。ぼさぼさヘアスタイルやゆで卵のようなメイクはどういう意図でああなったのだろうか。父親に反抗して、仏教にも批判的で、哲学っぽいセリフを口にするのだけど、人を殺したことへの反省や屈託が全くないので、うすっぺらく感じる。で、これまでにないような仏像を彫るのだけど、悟りを開いたわけではなく、単に前例を否定しただけ。そんな人が掘った仏像に力が宿るのに違和感がある。
もう一人の主人公一馬を演じる佐々木蔵之助。初めての歌舞伎で緊張していたのか、あまりの格好悪さにびっくりした。歌舞伎風の見得ができないのはしかたないにしても、時代劇で殺陣の経験はあるだろうに、刀を抜いたり構えたりする姿が何とも不格好。せっかく上背もあるし、歌舞伎のメイクも似合っていたのにもったいない。
現代劇から参加したほかの2人は浅野和之と福士誠治とも、歌舞伎のなかに入ることの違和感はなかった。特に浅野は女形(?)で狂言回しでもある役で存在感があった。一方、福士はあじゃがじをほうふつとさせる、ちょっと足りない弟分の役。こういうキャラクターにする必要性あるのかな。もっと格好いい役でもよかったのでは。
最後の立ち回りなどは派手でさすがスーパー歌舞伎の面目躍如。でも、戸板倒しの2枚同時にってあざとくないか。いろいろ見せ場もあって、飽きずにみられたのだけど、肝心のストーリーに共感できないので、感動がいまいちだったのが残念。あ、十和の師となる仏師、九龍を演じた右近が舞台を締めていたのはさすが。出番はそんなに長くなかったのだけど、存在感が凄い。
4月5日 開場三十周年記念文楽公演 第2部
菅原伝授手習鑑三段目
「車曳の段」
松王丸を英大夫、梅王丸を津駒大夫、桜丸を呂勢大夫、時平を松香大夫。三味線は清治。総勢5人の大夫が語るのだが、舞台に出ている見台は4つ。途中で太夫がいれ変わるのは初めて見た。
梅王と桜丸が息を合わせて語るのが、2人力を合わせて時平に対抗しようとしている風情でいい。
歌舞伎ではよく見る場面だが、人形の見得のほうがダイナミックかな。最後に出てくる時平のおどろおどろしさは歌舞伎のほうが迫力を感じたかも。
「茶筅酒の段」
千歳太夫と團七。
茶筅酒って何かと思ったら、祝いの餅に茶筅で酒を塗ることなのね。
女房3人が集結して、祝いの膳を用意するのだが、八重は家事が苦手なのね。すり鉢を倒したり、大根を上手く切れずに手を怪我したり。笑いの場面なのだが、この後の悲劇を思うと切ない。
「喧嘩の段」
咲甫太夫と喜一郎。
松王と梅王が大げんか。取っ組み合った松王が客席にお尻を向けた状態に。人形のこんな姿初めて見た。
「訴訟の段」
文字久大夫と藤蔵。
父、白太夫に勘当を願う松王丸。理由がよく解らない。親や兄弟に類が及ぶのを防ぐため?
「桜丸切腹の段」
住太夫と錦糸。引退興行だけあって、客席の拍手もひときわ大きい。人形も桜丸の蓑助と八重の文雀が華を添える。
私としては、悪いのは桜丸より、ばっくれて行方知れずになってしまった斎世親王だと思うので、、なんで切腹という気持ちなのだが、物語に引き込む力はさすが。
白太夫の「なんまいだ」はい伊賀越道中双六とかぶる気もしたが、泣かせる。
「天拝山の段」
英太夫と清友。
菅丞相が髪を振り乱したり、顔変わりしたり、火を噴いたり。こんなに激しい人だったっけというくらいの大活躍。
「寺入りの段」
芳穂太夫と清旭。
涎くりは15歳だったとは。このおかしみは歌舞伎のほうがあるかな。
小太郎は菅秀才の身代わりに殺されることを知っていたのか、知らなかったのか。千代が「悪あがきせまいぞ」というのはいい含めているようにも思えるが、立ち去る千代に「わしも行きたい」とすがりつくのは知らなかったようにも。
「寺子屋の段」
嶋太夫と富助。
悲劇の嶋大夫は泣かせる。見台にすがりつくように語る迫力たるや。
「車曳の段」
松王丸を英大夫、梅王丸を津駒大夫、桜丸を呂勢大夫、時平を松香大夫。三味線は清治。総勢5人の大夫が語るのだが、舞台に出ている見台は4つ。途中で太夫がいれ変わるのは初めて見た。
梅王と桜丸が息を合わせて語るのが、2人力を合わせて時平に対抗しようとしている風情でいい。
歌舞伎ではよく見る場面だが、人形の見得のほうがダイナミックかな。最後に出てくる時平のおどろおどろしさは歌舞伎のほうが迫力を感じたかも。
「茶筅酒の段」
千歳太夫と團七。
茶筅酒って何かと思ったら、祝いの餅に茶筅で酒を塗ることなのね。
女房3人が集結して、祝いの膳を用意するのだが、八重は家事が苦手なのね。すり鉢を倒したり、大根を上手く切れずに手を怪我したり。笑いの場面なのだが、この後の悲劇を思うと切ない。
「喧嘩の段」
咲甫太夫と喜一郎。
松王と梅王が大げんか。取っ組み合った松王が客席にお尻を向けた状態に。人形のこんな姿初めて見た。
「訴訟の段」
文字久大夫と藤蔵。
父、白太夫に勘当を願う松王丸。理由がよく解らない。親や兄弟に類が及ぶのを防ぐため?
「桜丸切腹の段」
住太夫と錦糸。引退興行だけあって、客席の拍手もひときわ大きい。人形も桜丸の蓑助と八重の文雀が華を添える。
私としては、悪いのは桜丸より、ばっくれて行方知れずになってしまった斎世親王だと思うので、、なんで切腹という気持ちなのだが、物語に引き込む力はさすが。
白太夫の「なんまいだ」はい伊賀越道中双六とかぶる気もしたが、泣かせる。
「天拝山の段」
英太夫と清友。
菅丞相が髪を振り乱したり、顔変わりしたり、火を噴いたり。こんなに激しい人だったっけというくらいの大活躍。
「寺入りの段」
芳穂太夫と清旭。
涎くりは15歳だったとは。このおかしみは歌舞伎のほうがあるかな。
小太郎は菅秀才の身代わりに殺されることを知っていたのか、知らなかったのか。千代が「悪あがきせまいぞ」というのはいい含めているようにも思えるが、立ち去る千代に「わしも行きたい」とすがりつくのは知らなかったようにも。
「寺子屋の段」
嶋太夫と富助。
悲劇の嶋大夫は泣かせる。見台にすがりつくように語る迫力たるや。
2014年4月19日土曜日
4月4日 開場三十周年記念文楽公演 第1部
菅原伝授手習鑑の通し。初めてみる段もあって、物語の背景がよく解った。
初段 「大内の段」
大夫と三味線は御簾の裏で、誰が語っているのか分からないのだけれど、某一人だけは分かってしまった。声が元気良すぎ。張りきっているのだろうけど、力みすぎ。
「加茂堤の段」
桜丸を三輪大夫、八重を芳穂大夫、松王丸を津国大夫、梅王丸を始大夫など。
菅丞相が失脚する原因となる、刈谷姫と斎世親王の逢引のシーン。人目もはばからずラブラブの2人が微笑ましいのだが、書置きを残して逃げてしまうってどうよ。悪いのは桜丸ではなくて、軽率な行動をとってしまう親王なのでは。
勇ましく牛車を引いていく八重は、歌舞伎のほうがおかしみがあるかな。
「筆法伝授の段」
口は靖大夫と龍爾。奥は津駒大夫と寛治。
筆法を伝授されるのは自分だとうぬぼれている左中弁希世がおかしい。愛嬌のある三枚目。
源蔵に筆法は伝授するが、勘当は解かないという菅丞相。腕を認めているなら、許してあげようよ。2人は深く反省しているのだし。
「築地の段」
睦大夫と清志郎。
流罪を言い渡され、自邸で謹慎する菅丞相。梅王丸が塀越しに菅秀才を源蔵夫婦に託すのだが、菅丞相の了承は得ているのだろうか?
二段目
「杖折檻の段」
呂勢大夫と清介。
刈谷姫の可憐さ(まあ、この人の軽率さのせいで、養父の菅丞相は大ピンチなわけだが)。立田前と覚寿という3人の女を語りわけるのは難しそうだ。
呂勢大夫の美声、もっと聞いていたいような。
「東天紅の段」
咲甫大夫と宗助。
夜明け前に鶏を鳴かせて時間を欺き、菅丞相を暗殺しようとする宿彌太郎。立田前に見つかり止められるが、切り捨ててしまう。えっと…妻をそんなにあっさり殺しちゃいますか。しかも、鶏を泣かせるために利用されてしまうなんて、かわいそうすぎ。
「丞相名残の段」
咲大夫と燕三。
歌舞伎でもよく見る段だが、仁左衛門の菅丞相が流す涙に比べると、あっさりした印象。
初段 「大内の段」
大夫と三味線は御簾の裏で、誰が語っているのか分からないのだけれど、某一人だけは分かってしまった。声が元気良すぎ。張りきっているのだろうけど、力みすぎ。
「加茂堤の段」
桜丸を三輪大夫、八重を芳穂大夫、松王丸を津国大夫、梅王丸を始大夫など。
菅丞相が失脚する原因となる、刈谷姫と斎世親王の逢引のシーン。人目もはばからずラブラブの2人が微笑ましいのだが、書置きを残して逃げてしまうってどうよ。悪いのは桜丸ではなくて、軽率な行動をとってしまう親王なのでは。
勇ましく牛車を引いていく八重は、歌舞伎のほうがおかしみがあるかな。
「筆法伝授の段」
口は靖大夫と龍爾。奥は津駒大夫と寛治。
筆法を伝授されるのは自分だとうぬぼれている左中弁希世がおかしい。愛嬌のある三枚目。
源蔵に筆法は伝授するが、勘当は解かないという菅丞相。腕を認めているなら、許してあげようよ。2人は深く反省しているのだし。
「築地の段」
睦大夫と清志郎。
流罪を言い渡され、自邸で謹慎する菅丞相。梅王丸が塀越しに菅秀才を源蔵夫婦に託すのだが、菅丞相の了承は得ているのだろうか?
二段目
「杖折檻の段」
呂勢大夫と清介。
刈谷姫の可憐さ(まあ、この人の軽率さのせいで、養父の菅丞相は大ピンチなわけだが)。立田前と覚寿という3人の女を語りわけるのは難しそうだ。
呂勢大夫の美声、もっと聞いていたいような。
「東天紅の段」
咲甫大夫と宗助。
夜明け前に鶏を鳴かせて時間を欺き、菅丞相を暗殺しようとする宿彌太郎。立田前に見つかり止められるが、切り捨ててしまう。えっと…妻をそんなにあっさり殺しちゃいますか。しかも、鶏を泣かせるために利用されてしまうなんて、かわいそうすぎ。
「丞相名残の段」
咲大夫と燕三。
歌舞伎でもよく見る段だが、仁左衛門の菅丞相が流す涙に比べると、あっさりした印象。
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