2022年4月10日日曜日

4月10日 四月大歌舞伎 第三部

「ぢいさんばあさん」

仁左衛門の伊織と玉三郎のるんがいちゃいちゃするのを愛でる幸福よ。若い日の2人の仲睦まじさは、側で見ている方が照れてしまうし(その意味で、久右衛門役の隼人は演技の必要ないのでは?と思うほど)、年老いてからの可愛らしさ。特に伊織のキュートなおじいちゃんぶりに癒される。
玉三郎は前半の若々しさに驚いた。隼人と並んでちゃんと姉弟に見えるのだもの。が、立ち上がるときによろけたり、珍しくセリフが怪しいところがあったりして、ちょっと心配も。
歌六の下嶋は、伊織が好きなのに構ってもらえなくて憎まれ口で言いすぎてるみたい。
甥夫婦に橋之助と千之助が若々しく好演。千之助は若妻の初々しさが似合うが、眉が青っぽくて横一直線みたいで気になった、 

「お祭り」 

玉三郎の芸者に福之助、歌之助の若い衆。
大向こうがないものの、あたかも声がかかった間をとって「待っていたって?待っていたとはありがたいねえ」と受ける玉三郎の見事さよ。

4月10日 四月大歌舞伎 第一部

「天一坊大岡政談」

猿之助は天一坊のような小悪党の役がはまる。吉宗のご落胤を騙ってすましているところと、本性がバレた開き直りとの落差がうまい。伊賀亮の愛之助は久しぶりにちゃんとした芝居を見せてもらった感じ。声がいいし、顔立ちもそれらしく作って、骨太な悪役が似合う。大岡役の松緑とのやりとりなど聞かせた。松緑は語尾の癖が気になったものの、同世代の役者たちががっぷりくんで演じるのはいい。幕切は、悪事が露見して縄をかけられていながら、天一坊の不敵な様子が見えた。
大岡と忠右衛門(左近)の親子が切腹をしようとするところ、肩衣を外したり、着物を肩脱ぎにしたりの所作が揃っていて踊りのよう。さすが親子。 

2022年4月9日土曜日

4月9日 横浜能楽堂特別公演「三老女 第1回」

「 財宝」
野村万作のシテ、アドは中村修一、内藤連、飯田豪。
アドの3人は初めて見る顔。若手なのか、橋掛かりを歩いてくるところから緊張した面持ち。万作の足取りがおぼつかないのは演技なのだろうが、アドの1人が腰の辺りに手を添える風(多分これも型)なので、あれと思った。そして、やはり少し意識が飛んでしまった…。後ろの席の客が「笑うところがなかった」と言っていたが、ゲラゲラ笑わなくても面白いものは面白いのだけど。
後半、囃子方が入って、賑やかに歌い舞う。最後は2人が腕を組んだ上に万作を乗せて退場…という、ちょっと変わった終わり方だった。

小鼓に大倉怜二郎。少し見ない間に青年の顔になっててびっくり。

「姥捨」
梅若実が体調不良で地頭に回り、シテは梅若紀昌。実はいつもの椅子だけでなく、切戸口から入るのも難しいらしく、地謡座の後ろの扉を開いて舞台に上がるという具合で、かなり心配な様子。移動するのも支えが必要だったみたいだし、途中、目を瞑って休んでいる様子もあった。

そして、姥捨。三老女のなかでは軽めの曲らしいのだが、140分(タイムテーブルには150分とあった)の大曲。特に後場が長い…。後シテの老女の姿になってからの舞で40分くらいあったのではないだろうか。あまり変わり映えのしない動きが続くので、辛かった…。
紀昌は前シテのときはなんだかよかったのに、後シテになってからはピンと来なかった。老女は自ら捨てられた経緯を語るでなく、最後は成仏するでもなく、ワキが先に去って舞台に残されるという展開が、よくわからなかった。老女の哀れさ?

地謡が優しい音づかいでメロディアスだなあと思った。
ワキは福王和幸。後場でも結構シテとの絡みがあり、度々体の向きを変えるなど、比較的することが多いように見えた。
アイは野村萬斎。女が捨てられた経緯をを説明するのだが、たっぷり20分の一人語り。深刻そう。 

2022年4月3日日曜日

4月2日 文楽公演 第三部

「娘景清廓日記」 

花菱屋を藤・団七。

日向嶋を千歳・富助。切語りにふさわしい千歳の語り。気合が入りすぎ最後ちょっと声が掠れ気味だったけど、おいおい改善していくだろうし、何より力をセーブして物足りないよりよっぽどまし。

「蝶の道行」
織、芳穂、亘、聖、薫に藤蔵、団吾、清丈、友之助、錦吾、燕二郎。 
華やかなのだけど、なんで死んじゃうかな。人形は一輔と玉助。並ぶと一輔に分がある。 

4月2日 文楽公演 第二部

「摂州合邦辻」 

万代池の段を三輪、希、南都、津国、咲寿に清友、清方。
あまり聞いたことのない段だが、これがあると物語がわかりやすい。

合邦住家は中を睦・清馗、前を呂勢・清治、切(!)を呂・清介。
こちらも呂勢が良かった。清治の三味線も冴えてた。一方、切の字がついて初めての舞台だった呂は…。清介がバンバン三味線を弾いてなんとか盛り立てていたというか、三味線にかき消されていたよ…。もっと義太夫節らしい語りを聞かせてほしい。

人形は和生の玉手御前が品があって素晴らしい。「蹴り殺すぞ」もちゃんと足は出しているのに、ヒステリックでないのがいい。
俊徳丸は休演の玉佳に代わって玉翔。本役ではないからか控えめだったけど、誠実な感じがよかった。

4月2日 文楽公演 第一部

珍しく幕開き三番叟に間に合った。 足踏みがちょっと不揃いな感じがするのが、若手っぽい。

「義経千本桜」
伏見稲荷の段は靖・清志郎。靖はちょっと不調か、語りがちょっと硬く感じた。

道行初音の旅は錣(←切語りになったのに切の字がつかない)の静御前と織の忠信、ツレに小住、碩、文字栄。三味線は宗介、勝平、寛太郎、清公、清允。華やかで、道行としては上々。

川連法眼館の前を呂勢・錦糸。これが、思いのほか良かった。音楽的な三味線の旋律に美声の語りが調和して、心地よい。
切りは咲・燕三。得意の四ノ切のはずなのだが、精彩を欠くというか、せっかくの狐言葉も力無い感じだったのが残念。

人形は、忠信の勘十郎の早着替えショーみたいな感じ? 覚えているだけで、黒紋付き、黒地に金の織模様、狐火、桜色の紋付きをとっかえひっかえ。早替わりのときは、下手の桜や小山の下からせり上がり、障子を破って…など、舞台のあちこちから登場して楽しませる。
道行では、静の簑二郎がキラキラ(金蘭?)の裃、勘十郎が黒地に金糸で模様の入った裃と、キラキラ豪華で祝祭感があったのは、咲太夫の文化功労者顕彰記念だから?