2012年10月21日日曜日

10月20日「ボクの四谷怪談」

騒音歌舞伎と銘打っていたけれど、歌舞伎の要素は松也演じるお岩くらい。登場人物の名前や設定(伊右衛門は塩冶判官の家臣で、お家取り潰しのため浪人になっているとか、与茂七たちが仇討ちのために画策しているとか)は原作と同じだが、設定は現在でTシャツにジーンズ姿で歌ったり、踊ったり。

その中で、松也が際立って良かった。オープニングでは、Tシャツ&ジーンズの出演者のなかで一人、着物姿で舞を披露。音楽はロックなので、日舞には不利だろうに、指先までうつくしい。
特によかったのが、髪梳きのシーン。ここだけは、ほぼ歌舞伎のとおり演じられたのだが、ちょっと中村屋を彷彿とさせる、正統派のお岩。声もいいので、哀れさが一層怖さを醸し出す。今度はぜひ通しで見てみたいなあ。
ただ、最後、化けてでたお岩は伊右衛門自身だったということで、伊右衛門役の佐藤隆太と同じ、金髪にタンクトップ&ジーンズという姿になるのだか、ぽっちゃりして見えて、なんか残念なかんじ。20代男子として決して太ってはいないのだろうが、鍛えられた役者の隣に並ぶと…。女方としても、もうちょっとほっそりしてくれたら、もっと美しいのにと思ったのだけど。
歌は上手い。地声もいいが、女声もよかったので驚いた。この公演を通して歌がひどかったので、余計に上手くかんじたのかも。うまく歌うより、感情をぶつけるような歌い方をするという演出だったそうなのだけど、それにしても、ほかの役者のは聞くに耐えない歌が結構多かった。

作品としては、面白さがよく分からなかった。3時間半の長丁場だったのだが、正直、長く感じた。ドタバタ群像劇で、話が散漫に感じられたのと、何度かキャストが素で笑ったり(何か失敗したらしい)するのも、何か白けた。ミュージカルではあるけれど、歌も踊りも(盆踊り風?)素人っぽい感じで、(そういう演出かもしれないけど)長時間見続けるのはしんどい。
毒を盛られたわけでもなく、お岩が死んでしまうので、何で化けて出るのか分からない、というのは、伊右衛門自身が生んだ幻想だったというオチに繋がるのだが、歌舞伎版の四谷怪談では肝心のお岩の怨みがなくなると、物語の主題が最後まで分からなくて戸惑った。
もう一回みたら、面白さがわかるのかも。隣の席の女性は、何度かみているらしく、のっけからノリノリで、歌を口ずさむわ、最後はロックコンサートかってくらい身体を揺するわ、で楽しそうだった。(でも、そのせいで私は余計に引いた)

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