2011年10月10日月曜日

10月8日 芸術祭十月花形歌舞伎 夜の部

「當世流小栗判官」

猿之助四十八選の一つ。亀治郎の猿之助襲名発表後、初めての芝居なので、観に行ってみた。

猿之助歌舞伎らしい、スペクタクルな、大がかりな舞台で、亀治郎は3役をこなして、出ずっぱりの大活躍。…だけどさあ。熱演過ぎて、何だか2幕目でおなかいっぱいな感じ。判官とお駒は3幕の早変わりなどあるから、兼ねる意味があるけど、浪七は別の人でもいいのでは?

笑也の照手姫は、可憐で美しい。これで50過ぎって、だれかが言っていたけど奇跡的。

獅童がやった橋蔵って、この役いるの?ちょっと頭の足りない役なのだけど、新撰組!の捨助だっけ?を誇張した感じで、歌舞伎らしくないというか、浮いている感じがした。引っ込みのところで、細マッチョの音楽を流したり、受けを狙っているのだろうけど、滑っちゃった感じ?

三郎をやった薪車が先月に続いてよかった。次郎役の猿弥はすっかり悪役が板についた感じだけど、薪車もなかなか。赤面の小悪党ぶりが、小憎らしくはまっていた。

遊行上人の愛之助は、不可もなく。

最後まで観て、猿之助歌舞伎は私はあんまり好きではないわ、と再認識した。見せどころいっぱいだし、大がかりな仕掛けで楽しませるけど、私には too much。ちょっと食傷気味。

9月25日 松竹大歌舞伎 西コース

「雨の五郎」

愛之助が曽我五郎。すっきりした二枚目で見せどころもたっぷり。
けど、舞踊は難しいなあ。

「義経千本桜」

茶店とすし屋。たしか、前回の巡業公演もそうだった。
仁左衛門のいがみの権太に秀太郎の小せん、維盛、孝太郎のお里に愛之助の小金吾…と松嶋屋一門で固めているので、バランスがよくて、息もぴったり。

それにしても、仁左衛門の権太は何度見てもいいなあ…。小せんと子供を身代わりに差し出すところなど、心情が伝わってきて、泣かされる。小せんとのやり取りも、心の声が聞こえてくるようで。

維盛の登場のシーンでは、寿司桶をふつうに持っているところが、他と違う。他の家では、さぞ重いもののようによろよろと登場し、そのあと、お里がひょいと持ち上げて、笑いどころになっているのだけど、よく考えてみたら、商いの帰りなのだから、寿司桶の中身は空。いくら非力なお殿様だからって、空の寿司桶なら持てるはずで、リアルなのはこちらのほうかも。

愛之助の小金吾ははまり役というか、もはや安定感を感じるほど。ファンとしては、いい意味での裏切りを期待したい気もするけど。

意外によかったのが、薪車の景時。こういう、重厚感を要求される役も悪くない。