2007年7月27日金曜日

七月大歌舞伎@松竹座

行ってしまった2回目!総じて前回より集中して見られたし、物語に入り込めた。より深く味わえたかな。

「鳴神」
愛之助の鳴神上人が観たかったの。私の評価は愛之助>海老蔵。今回、海老蔵と他の役者さんを観比べて分かったのは、海老蔵のセリフが嘘っぽい…というか中味が伴ってない感じ。海老蔵のセリフって、小学生が丸暗記したのを暗唱してるのに似てる。うわべだけなぞっているようで、内容が伝わってこないのだ。正直、今回愛之助の舞台を観て初めてセリフの内容が分かったところも多かった。声の調子とか大きさとか、一見(一聴?)同じようなのに違うのは、多分、セリフに感情が伴っているかどうかだと思う。
ともあれ、愛之助の鳴神は、冒頭、威厳があり偉いお坊様らしさが出ていてgood。雲之絶間姫の色香に迷うところはあっさりしすぎている気もしたが、最後の怒りはそれまでとの対比が出ていて良かった。見るまでは、荒事の迫力を出せるのか不安だったけど杞憂だった。型の美しさだけでない、演技としての素晴らしさがあったと思う。面白かった。
「橋弁慶」
改めて、弁慶似合う。踊りの良し悪しはよく分からないけど、手足が短く見えるのがマイナスか。何だかじたばたしているように見えるんだよね。
最後、義経を見送って、「よき人と巡り会った」というように笑みを浮かべるところ。ああいう、もの言わんとする表情はうまいと思う。

「渡海屋」
今回は子役がちゃんとしてたので(代わった?)安心して観てられた。秀太郎さんのノロケのセリフや、安徳天皇とのやり取りも集中して楽しめたし。銀平の天気を読む力をのろけるところは、秀太郎さんのようなベテランはさすが。自然だし、しっくりくる。
仁佐衛門さんの知盛は素晴らしい!私なんぞが偉そうに言うことではないが、演技に身がある。説得力がちがう。錨がちゃんと重そうに見えるもの(苦笑)
愛之助の相模五郎は悪くないがもう一味欲しいか。後半のシリアスなところはいいが、前半の道化はもっと思い切りやってもいいのでは。この人は真面目すぎるのか、三枚目がなんか物足りない。
子役は無難にこなしてた。夜の部の子かな。薪車の義経はちょっと威厳が足りない感じ。セリフにもっと重みが欲しかった。歩き方もどこかぎこちない。海老蔵とどっこいどっこい?

「鳥辺山心中」
二枚目の愛之助がいい。隣にいるのが孝太郎でなければ…いや、もっと老け役とか、不細工な役ならいいのだけど、道行きのシーンでポーズを決めてもイマイチ入り込めないというか。
若い芸者役の竹三郎さんに改めてびっくり。ちゃんと娘に見えた。これが芸の力?
薪車は似合いの役。正義感の強い直情型の役は男前がイキる。

「身代座禅」
仁座衛門さんの右京可愛い。出てきた時から客席がほのぼのした雰囲気に包まれる。スケベ笑いをしてても品があるんだよね。玉の井がいないか確かめるところとか、やりすぎないのがいい。コントじゃあないんだからさ…ということが見比べて分かった(笑)
愛之助の太郎冠者は全出に同じ。道化役はもっと思いきってやってくれい。
歌六さんの玉の井はあっさり。もう少し可愛いらしさがあってもいいかな。

「女殺油地獄」
今回一番観たかったのがこれ。海老蔵と比べて、逆に「ああ、お手本はこうだったのね」というのが分かった。レプリカばかり見せられてたものの、本物をようやく見られた。(獅童の与兵衛も見たので)関西弁が自然なのは勿論、セリフの意味がよくわかる。うわべだけなぞっても中味は伝わらないってこと。
殺しの場での狂気も、派手ではないがぞっとするような凄みがあった。前半の軽薄さと狂犬のような狂気に、海老蔵ハマリ役かも…と思っていたが、もっと上質なものもあるんだなあ。海老蔵のが劇画とすれば、仁座衛門さんのは精細な鉛筆画?うまい喩えが見つからないが、ステージが違う。いやあ、凄かった。
孝太郎のお吉は良かった。こういうちょっと老け役?は嵌まる。
歌六さんと竹三郎さんの夫婦は泣かせる。うまい役者がやるとあり得ないお話も説得力を持つから不思議。思わず乗り出すほどの好演。

2007年7月24日火曜日

7月7日松竹座

随分間があいてしまったけど、2回目を見る前に。

【昼の部】

「鳴神」
海老蔵の鳴神上人はなんか薄っぺら。霊験あらたかな上人さまには見えず、ただのスケベじじい?孝太郎の雲之絶間姫も、お堅い上人を美貌で麗絡というより、人妻が近所のご主人を誘惑、、、程度にしか見えない。怒りのあまり姿が変わってからは、さすが成田屋の芸だけあって見映えはよかったが、怒り心頭というよりなんかふざけてるように見えた。総じて、こんなもの?

「橋弁慶」
愛之助の踊りはどうなんだろう。あまりよく分からないので評価はできないのだが、手足が短いせいか、いっぱいいっぱいに見える(気がする)義経役の壱太郎は若々しく、好感が持てた。ひらりと舞うところがいい。ただ、鼻の下の汗が気になって…(すまん)

「義経千本桜」

仁左衛門さん、さすが。知盛の迫力たるや、正月の浅草で見たものとは似て非なるものだった。(比べては失礼ですが)ああ、こういう話だったのねと改めて分かったというか。

秀太郎さんの典侍の局はまたすばらしい。銀平の女房の時、旦那の空を見る力を自慢するところとか、余裕がある演技。こういうお役は、ベテランの俳優さんの方がいいなあ。ただ、典侍の局見せ場、安徳天皇を抱いて入水しようかというところで、安徳天皇役の子役が眠いのかグラグラ揺れてて後ろの黒子さんに支えられてようやく立っているという状態。しかも、場面転換で袖に引っ込んだあと、大物浦の場では、舞台に出るのを嫌がって泣き叫ぶ声が。秀太郎さんがアドリブで天皇のセリフを代わりに言ってストーリーは進んでいったけど、こんなことってあるのね。眠そうな子役のせいでせっかくの悲劇のシーンが笑いに包まれるし、緊迫感のあるはずのシーンで子供の泣き声が聞こえるしで、ストーリーに集中できなかったのが返す返すも残念。

愛之助の相模五郎は…ごめん!鶴亀さんのほうがいいと思ってしまった。いやね、愛之助と鶴亀のコンビがよかったなあと。魚づくしのやり取りとか、曲がった剣をさやに収めようとするとこととか、ちょっとあっさりしすぎ?もっと笑わせて欲しかった。渡海屋奥座敷の場での相模はよかった。

海老蔵の義経は……。この人、すっきり系の美男子を演じるとき、どうして地に足が着いていないというか、重心が浮ついたような、焦点の定まらない表情をするのだろう。こういうのが高貴だと思ってる?義経の威厳が感じられなかった。

【夜の部】

「鳥辺山心中」

愛之助はともかく、孝太郎が美しくないんだよね…。いまいちうっとりできないのはそのせいか。

びっくりしたのは竹三郎さん。いつもは老け役ばっかりだけど、若い芸妓役がちゃんと若く見えたのに驚いた。これが芸のなせる業なのね。孝太郎より華がある気がした。

「身代座禅」

仁左衛門さんかわいい。右京が出てきた瞬間から会場がほのぼのムードに。インタビューで品をなくさないようにとあったけど、まさにそう。コミカルなんだけど、やりすぎがないので、上品な感じに収まってる気がした。

「女殺油地獄」

海老蔵の関西弁とか、心配していたのだが、意外によかった。歌うような台詞回しは相変わらずなのだが(苦笑)、与平衛のどうしようもなさが出ていた。(単に地を出しただけ?)殺しのシーンの狂気は、狂犬のようで、これまた、意外によかった。

孝太郎もこういう、ちょい老け役だと悪くない。世話を焼いてやったのに、殺されちゃう割に合わない薄幸さとか、感情移入できた。

2007年7月20日金曜日

NINAGAWA十二夜

15日の昼の部を観劇。

菊之介がいい!若侍(?)と可憐な姫、さらに男装した姫の3役の切り替えが見事。観る前は、役柄がごちゃごちゃになってしまうのでは…と心配していたけど、そんな心配は無用だった。男装しているときにふいに女の声になってしまうところなんかもとても自然で。今の若手女形の中では一番の美人さんだけあって、美しい姿に見とれるほど。早替わりが随所に盛り込んであって、歌舞伎らしさを十分堪能できたし。

バロック風音楽と三味線の音が奇妙に融合していて違和感は感じなかった。鏡の舞台も、ハーフミラーが有効に使われていてグッド!

意外によかったのが錦之介。前に襲名披露を見たときは、何か無味無臭な役者さんだなあと思っていたのだけど、今回の大篠左大臣役は「カッコいい!」と思った。報われぬ恋に苦悩する姿とか、惚れ惚れするような男前ぶりなのだ。もともと顔立ちはキレイなので、適役にはまれば輝くということか。いやあ、お見それしました。

亀次郎のまあはちょっとやりすぎの感も。大河の武田信玄役で見直していたところだったので、ちょっとがっかり。この人が女役をすると、どこかおばちゃんみたいというか、垢抜けないのはなぜだろう?下ぶくれ気味の輪郭のせいか!?