「盛綱陣屋」
仁左衛門の盛綱がすばらしい。首実検で、高綱の首ではないと気づきながら、小四郎が「父上!」と言うのを不審に思い、からくりを見極めてニヤリとする…という、盛綱の心の動きが、まるでセリフを聞かされているようにつぶさに分かる。その前段でも、高綱が惑わないように、小四郎を死なせるよう未妙に頼むくだりなど、いまの常識からはあり得ない展開なのだが、盛綱の苦悩がつたわってくる。
芝雀の奥方、時蔵の篝火と配役もピタリとはまって、見応えのある一幕だった。
惜しむらくは、小四郎を演じた金太郎。梨園の子だからと期待値を高めてしまったせいか、気持ちが入っていないように感じてしまった。セリフはしっかり入っていたし、所作もちゃんとしているのだけど、何か別のことを考えながら芝居しているように見えてしまったのが残念。いい子役だと、歌舞伎独特の棒読みの台詞でも、うるっとくることあるのだけど、そうはならなかった。
0 件のコメント:
コメントを投稿