菊之助が初めて三役を勤める「義経千本桜」。松竹と同じく、期間限定でネット配信してくれたのはありがたいが、こちらは2時間以内に収めるためにところどころカットされているのが惜しい。本筋には影響しなくても、役者の見せどころだったりするわけで。
Aプロ 伏見稲荷鳥居前の場から、渡海屋、大物浦。
鴈治郎の義経は、品格はともかく、悲壮感が足りない気がする。福々しいから?
鳥居前の静御前は米吉。かわいらしい静。弁慶が誰かと思ったら、亀蔵だった。役によってがらりと変わるのは、芸達者ゆえか。
忠信実ハ源九郎狐の菊之助。花道の引っ込みで狐の素振りが出るところ、少々くどく感じたのは、ネットの画面で観ているからか。
渡海屋、大物浦は、菊之助の銀平。ミスキャストに思えるが、以前の鑑賞教室で意外にも健闘していたのは実証済み。画面で見るせいか、最後の瀕死のところが嘘っぽく見えてしまった。お安実ハ安徳帝は丑之助。少々セリフが棒読みだが、愛される可愛さ。
相模五郎と入江丹前の魚尽くしや、お柳(梅枝)ののろけの件がカットされてしまったのが残念。
Bプロは椎の木、小金吾討死から鮨屋まで。
菊之助初役のいがみの権太は江戸風なのかなあ。シュッとした男前で、ダメ男の可愛げがないのに違和感を覚える。
人相書きと弥助(梅枝)を見比べて合点するところはちょっと説明的。母おくらの前でウソ泣きをするところ、義太夫では「舌がとどかぬ」と言っているのにその素振りはなく、茶で湿らせるだけだったり、家をでたところで「親父が帰ってきた」となぜか家の中に戻り、隠れるのがよく分からん。そのまま家の陰にでも隠れていたらいいのでは?小せんが自ら名乗り出て身代わりになるところも、上方風とは違うのか。
Cプロは道行初音旅から河連法眼館。
道行の静は時蔵。忠信実ハ狐の菊之助はこの役が一番はまっている。逸見藤太の亀蔵の芸域の広さよ。
河連法眼館の静は梅枝。菊之助は忠信の凛々しさ、狐の愛らしさ、身のこなしの軽快さと、申し分なし。
2020年4月30日木曜日
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